はじめに
ハーブの日常管理で大変なこと、それは害虫が発生しないように予防すること、そして発生した時の対処です。
比較的害虫には強いと言われているハーブですが、どれだけ気をつけていても、春から夏にかけて温度と湿度が上がる頃にアブラムシやハダニなどが発生してしまう場合があります。
多くのハーブの生まれ故郷である地中海沿岸は、夏に雨が少なく乾燥しており、逆に日本は湿気が多くジメジメしていて害虫が発生しやすい傾向があります。
元々の生育環境が違うため、発生してしまうのは仕方がないことですが、そのまま放置したり対応が遅れると一気に増殖して、最終的には植物を枯らしてしまいます。
そのため、日本でハーブを育てるには、日常的な「観察」「予防」「駆除」がとても重要になってきます。
本記事は、虫が発生しやすい環境や予防方法などについての解説です。
皆さんが健康で丈夫なハーブを育てるための参考材料にしていただければ幸いです。
つきやすい虫と発生しやすい環境
品種や時期、環境によっても多少違いがありますが、「ハーブにつきやすい」として頻繁に挙げられるのは主に下記の虫です。
・アブラムシ
・ハダニ
・カイガラムシ
・コナジラミ
害虫の発生は栽培環境と必ず因果関係があります。
細かい要因は様々ですが、虫ごとに発生しやすい主な環境を簡単に把握しておきましょう。
風通しが悪い / 日当たりが悪い / 土中の窒素分が多い etc
温度が高い / 乾燥している etc
風通しが悪い / 湿度が高い etc
イモムシ(毛虫やヨトウムシなど)が発生することもありますが、蝶や蛾の卵の産みつけによるものです。
育苗中であれば寒冷紗や防虫ネットを利用して、葉に寄り付かないようにするのが一番の対策です。
観察しよう
まず害虫対策の基本で、一番大切なのは日々の観察です。
発生した初期段階であれば、数も少なく比較的駆除も楽ですが、植物につく虫の多くは繁殖スピードが非常に早いので放置するのは厳禁です。
特に発生しやすいアブラムシは、短期間で一気に繁殖します。
アブラムシは一度に30個ほどの卵を産み、成虫になるまで10日ほどしかかかりません。
ちょっと極端な例ですが、好条件で1ヶ月間放置した場合は、少なくとも2万匹以上増える結果になります。
このように、発生した虫に気づかずに過ごしていると、ある日突然、取り返しのつかないことになっていることがあります。
まずは、早期発見のために、短時間でも良いので毎日観察する習慣を身につけましょう。
発生を察知する上で、しっかり観察しておきたい箇所は「新芽」と「葉裏」です。
これらは、パッと見ただけでは発見しにくく見落としやすい箇所ですので、特に注意してチェックしておきたいところです。
一見、虫がいないように見えても、葉の様子に違和感を感じたり、虫食いのような小さな穴がある場合には、隠れた場所に潜んでいる場合もあるので、葉を裏返して細かく観察するようにしましょう。
予防しよう
栽培環境の見直し
観察と同時に「虫が発生しやすい環境を作らない」ことも非常に重要です。
前述の通り、風通しが悪い場所や湿度が高い場所、または乾燥しすぎている場所では虫が発生しやすいです。
もし栽培環境に難ありと感じた場合には、鉢やプランターの場所を移してあげる必要があります。
例えば、
アブラムシは「風通しが悪い / 日当たりが悪い / 土中の窒素分が多い」という環境下で発生しやすいので、逆に、風通しと日当たりが良い場所に移したり、窒素分の多い肥料を控えるという対策を行います。
虫の発生はハーブにとって「適切な環境かどうか」のバロメーターになります。
虫の発生を逆手に取って、更に適した環境を整えてあげましょう。
育てているハーブの原産国の気候を知ることで、そのハーブに適した栽培環境が自然と見えてきます。
中々うまく防虫できない、、という方は、一度その植物の生まれ育った国の気候を調べ、今の栽培環境(温度や湿度など)を可能な限りその気候帯の環境に近づけてみてください。
室内栽培、鉢植え栽培において気をつけるべきポイントを下記のページにまとめましたので、あわせてご覧ください。
葉裏への水やり
夏場の乾燥で発生しやすいハダニやコナジラミなどは水を嫌いますので、水やりの時に葉の裏まで湿らせてあげることも一つの予防策になります。
注)夏場の暑い時間帯に株全体へ水をかけると、葉焼けを起こしたり、鉢内の温度が一気に上がり根を痛めてしまいます。水やりは朝のうちか、夕方の涼しくなった時間帯に行いましょう。
資材の利用
更にしっかりとした対策をしたいという方は、資材を利用するのも一つの方法です。
例えば、ハダニやコナジラミは非常に軽い虫ですので風に運ばれたり、成虫が自ら飛んで来る場合もあります。
そんな時に役立つのが「粘着トラップ」です。
多くの害虫には黄色を好む性質があり、その誘引効果を利用して使い捨ての粘着トラップシートを製造しているメーカーもあります。
鉢やプランター、花壇の付近にぶら下げて使用するだけですので、植物自体に触れことなく簡単に撃退できます。
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また、炭を作るときに出た水蒸気を原料とした「木酢液」や、インドセンダン(ニーム)という植物から作られる「ニームオイル」も害虫対策には有効です。
どちらも天然成分ですので、化学薬品を使用したくない方にはおすすめです。
・木酢液にニームオイルと善玉活性水を配合した植物保護液 「無農薬への道」をチェック!駆除の方法
予防対策をしても発生してしまった場合は駆除するしかありません。
日々の観察で早期に発見すれば、数の少ないうちに駆除でき、増殖する前に対策が打てます。
観賞用の草花と違って、実用性のあるハーブ類はお茶にしたり料理の材料として使う方が多いので、なるべく安全な方法を選びたいものです。
手、道具を使う
害虫を駆除する方法で一番早く確実、そしてすぐ行えるのが手で排除することです。
茎や葉の裏についている虫は、見つけ次第、キッチンペーパーやティッシュペーパー、または使用済みの歯ブラシを利用してこすり落とします。大きめの虫であれば割り箸でつまんで駆除できます。
また、テープを利用するのも有効です。粘着力が弱めのマスキングテープなどであれば、植物自体を傷めずに済み、小さな虫は楽に排除できます。
もし、特定の茎葉についている場合は、思いきって切り捨ててしまうのも一つの方法です。株が元気になれば、また新しい新芽が伸びてきますのでご安心ください。
自然農薬を使う
酢やニンニク、唐辛子、牛乳といった家庭にある食材を使って農薬を自作することもできます。
種類によっては、発生前に散布しておくことで予防になるものもありますので、是非お試しください。
本サイトでも「ワームウッド(ニガヨモギ)」や「ドクダミ」を使った防虫スプレーの作り方を解説しておりますので、よろしければ下記のページも参考になさってください。
日々観察していても、見落としてしまったり、しばらく留守にしていた期間に虫がかなり増殖していたということもあります。
既に茎葉を覆うくらいの数まで増え、食害が出ているような場合には、やむを得ず化学的な薬剤に頼らなければならないケースもあります。
それでも尚、「化学薬品系のものを使うのに抵抗がある…」という方は、思い切って新しい株に更新してしまうのもありだと思います。
育ててきたハーブがダメになってしまうのは非常に残念なことですが、増殖した虫と闘い、弱った株を養生して回復させるには時間と労力がかかります。
一年草の場合、虫の駆除が完全に終わる頃にはその植物の一生も終わっている…ということもありますので、時には臨機応変に考えることも大切です。
最後に
害虫の駆除方法には様々ありますが、本記事では初めてハーブを育てる方でも簡単にできる観察・予防・駆除について解説させていただきました。
できるだけ労力をかけないようにするためには、何よりもまず栽培環境をしっかり整えるということが大切です。
日々の水やりや施肥という栽培の基本をしっかりと理解し実践していけば、自然と虫の被害も少なくなっていきます。「駆除する」ということよりも「観察」と「予防」を中心に考えていった方がより合理的です。
本記事でご紹介した内容をもとに、植物にとって心地よい環境を作ってあげましょう。
蒸し暑い時期にしっかり手入れを行うことで害虫発生リスクを軽減することができます。下記のページも是非参考になさってください。