はじめに
私が勤めていたハーブ苗専門店では、定番のスイートバジルをはじめ、レモンバジル、オスミンパープルバジル、ブッシュバジルなど、約10品種のバジルを取り扱っていました。
「バジル」と言えば、恐らくほとんどの方が「ピザやパスタに乗っているアレ(=スイートバジル)」を想像するでしょう。
大人から子供まで幅広く認知されており、まさにバジル界の王様と言える存在ですが、その影に隠れて密かに人気があるのが、今回ご紹介する「ホーリーバジル」です。
一般的な認知度はそこまで高くないのに、なぜそんなに人気があるのか、今回はその魅力や育て方、使い方などをご紹介したいと思います。
ホーリーバジルについて
基本情報
学名 | Ocimum tenuiflorum |
別名 | トゥルシー |
原産 | インド |
科名 | シソ科メボウキ属 |
分類 | 一年草 |
大きさ | 30〜70cm程度 |
開花時期 | 6〜8月頃 |
耐性 | 耐寒性:なし 耐暑性:あり |
活用法 | 料理、お茶、ポプリ、精油 etc |
ホーリーバジルはメディカルハーブの中でも代表的な存在の一つです。
インドの伝統的医学「アーユルヴェーダ」では薬草として使われ「不老不死の霊薬」「神聖なハーブ」として、長い歴史の中で人々の心と体を癒してきました。
もちろん薬草としてだけではく、普通に食用や飲用として他のハーブと同じように使うことができます。
香りが強く、少しスパイシーさも感じさせてくれる清涼感のある風味が特徴です。
原産地のインドや温暖な気候帯では多年草として育てられていますが、寒さに弱いため、冬越しが難しい日本では一年草扱いとなります。
活用方法
ホーリーバジルは使用できる部位が多いため、目的に応じて葉、茎、花、をお茶や料理、虫除け、精油の抽出など幅広く利用できます。
① 料理
ホーリーバジルはタイの定番料理「ガパオ」などにもよく使われていますので、実際に食べたことがある方も多いのではないでしょうか。
もちろん、スイートバジルと同じようにピザやパスタに使うこともできますし、油との相性も良いので炒め物として調理するのもおすすめです。
どんな風味かちょっとだけ試してみたいという方は、手軽に料理に加えて味を確かめてください。
使い方は簡単。葉を摘んで、そのまま具材として混ぜたり火を通すだけです!
【生葉を加えるだけの簡単メニュー】
・お肉の炒めもの
・オムレツ
・カレー
・サンドイッチ
・サラダ
手間をかけずにいつもと違った風味が味わえますので、是非一度お試しください♪
普段スイートバジルを使っているという料理でも、ちょっと趣向を変えてホーリーバジルに切り替えてみると一味変わって新鮮です。
難しいレシピよりも、まずは身近な料理に使ってみてください。
下記のページでは、ハーブを料理するときに便利なアイテムをご紹介しています。ご興味ある方はあわせてご覧ください。
② ハーブティー
ホーリーバジルのお茶は葉を摘んでお湯を注ぐだけ。ご家庭で簡単に味わえます。
乾燥加工したものより生葉のほうが清涼感が引き立ちますので、もし育てている方は是非フレッシュな状態で楽しんでみてください。
キリッとしたスパイシーさと清涼感がある味で、リフレッシュしたい時には特におすすめです。
前述の通り、インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」で不老不死の霊薬とされているように、様々な薬効があるということが確認されています。
ホーリーバジルのスパーシーさの源でもある「オイゲノール」には抗酸化作用があるとされ、日常的にお茶として楽しみつつアンチエイジングに活用したり、風邪のひきはじめで少し喉の調子を整えるために活用する方もいます。
他のハーブとブレンドして好みの味に調整すれば、更に飲みやすくなります。
【ホーリーバジルと相性の良いもの】
レモングラス、レモンバーム
▶︎柑橘系の風味が加わり、飲みやすさが増します。
ほうじ茶
▶︎風味に軽さが増して飲みやすくなります。
ジンジャー、ミント
▶︎スパイシーさが増して爽快感がアップします。
③ 虫除け
品種によって色々なハーブが虫除けとして活用されていますが、ホーリーバジルも蚊除けに活かすことができます。
ホーリーバジルには「シネオール」(別名:ユーカリプトール)という成分が含まれています。
これはローズマリー、ヨモギ、セージ、ローレルなどにも含まれる成分で、強い虫除け効果を発揮します。
虫除けスプレーの作り方は、以前紹介したキャットニップの記事内でもご紹介しております。材料をホーリーバジルにするだけですので、是非お試しください。
ホーリーバジルを育てていないという方、すぐにでも作ってみたいという方は、生葉の代わりにホーリーバジルの精油を使い、下記の要領で作れます。
【材料】
※お好みの完成量に合わせて調整してください。
・無水エタノール 10ml
・精製水 15ml
・ホーリーバジルの精油 10〜15滴
・スプレーボトル(遮光性のもので、プラスチックは不可)
【作り方】
1:計量カップや小さいボールなどの容器に無水エタノールを入れ、次に精油を入れます。
2:割り箸などでしっかりと混ぜます。
3:2に精製水を加えます。
4:できたものをスプレーボトルに入れ、キャップを閉めて振ります。
以上で完成です!
【ワンポイントアドバイス】
★精製水がない場合は、水道のお水や市販のミネラルウォーターでもOKです。
★プラスチック製の容器は精油やエタノールの影響を受けて溶けて変質する可能性がありますので、必ずガラス製のものを用意してください。
★精油を入れるときは、精油の瓶を振ったりせずに、自然と液体が垂れるのを待ちましょう。
④ コンパニオンプランツ
「コンパニオンプランツ」とは、野菜などを栽培する時に一緒に植えておくことで、虫除けや成長促進などの良い効果を発揮する植物のことです。
実はホーリーバジルにもコンパニオンプランツとして優秀な一面があります。
ナス科やアブラナ科の植物付近に一緒に植えることで、アブラムシやコナジラミなどの害を軽減することができます。
【コンパニオンプランツとして相性の良いもの】
(ナス科)なす、トマト、ししとう、ピーマン etc
(アブラナ科)小松菜、ルッコラ、白菜、大根、キャベツ、ブロッコリー etc
もちろん市販の農薬のような即効性はありませんが、家庭菜園で極力化学物質を使用したくないという方は是非お試しください。
他にもコンパニオンプランツとして優秀なハーブがたくさんありますので、ご興味ある方は下記ページをご参照ください。
ホーリーバジルを育ててみよう!
ホーリーバジルは生育も旺盛で、初心者でも簡単に鉢植えやプランターで栽培することができます。
植え付け
生育環境としては、日当たりと風通し、水はけの良い場所を好みます。
強い光が当たりすぎると葉が固くなりますので、鉢植えの場合、真夏は半日陰に移動しましょう。
<種子から育てる>
▶︎発芽温度は20〜25℃。
▶︎種まきは4月〜6月頃、発芽温度を確保できる時期に限ります。
▶︎地面や鉢に直接ばら撒きして、間引きながら育てます。
▶︎バジルの種子は好光性なので、とにかく薄く(2mm程度)覆土、または覆土せずに上から軽く鎮圧します。
(好光性種子についてはこちらのページをご参照ください。)
▶︎発芽するまで土を乾燥させないように水やりを行いますが、種が流れ出ないようにするため、なるべく霧吹きなどを使用して行います。
▶︎環境にもよりますが1週間程度で発芽します。
▶︎双葉が生えはじめ、葉が重なり合ったら生長の良さそうなほうを残して間引きます。
▶︎本葉が2〜3枚になったら2度目の間引きをし、それ以降は鉢やプランターのサイズに応じて間引き、最終的に育てる株を残します。
(5〜6号鉢の場合は1株、7号〜8号鉢であれば2〜3株残すのが目安です。)
タネから育てるのはちょっとハードルが高い,,,という方は、もちろん苗から育ててもOKです。
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<苗の植え付け>
苗から育てる方は、株と株の間に20〜30cm程度の間隔を空けましょう。
ホーリーバジルは中性〜弱アルカリ性の土を好みます。
市販品であれば、元肥入りの園芸用土やハーブの土で問題なく育ちますが、ご自身でブレンドするのであれば小粒の赤玉土7に対して腐葉土3の割合がおすすめです。
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日常管理
◆水やり
地植えの場合、根付いてからは水やりの必要がありませんが、乾燥した日が長く続くようでしたらしっかりとあげましょう。
鉢植えの場合は、表面が乾いたら、鉢底から古い水が押し出されるくらいにたっぷり与えます。
梅雨の時期は湿度と日照不足が原因となり徒長しやすいので、水やりの頻度は少なめにしましょう。
◆肥料
園芸用土を使う場合、元肥は要りません。
葉(特に下の葉)が黄色っぽくなってきた場合は、肥料切れのサインですので、液肥で2週間に一回程度養分を補ってあげましょう。
◆剪定
花をつけてしまうと、葉が硬くなり風味も落ちますので、花芽を見つけたら早めに切り取ります。
本葉が10枚ほど付いて草丈が20cm前後になったら摘芯(※)しましょう。
初めてハーブを栽培される方、もちくは剪定をしたことがない方は下記のページも参考になさってください。
◆病害虫
気温と湿度が高くなるとアブラムシが発生しやすくなります。
新芽につくと生育を阻害しますので見つけ次第なるべく早く駆除しましょう。
害虫の予防と駆除に関しては下記のページを参考になさってください。
収穫
春から秋にかけて、葉が茂っているうちはいつでも収穫可能です。
最上部の葉を、摘芯も兼ねて茎ごと収穫していくと、また新しい脇芽が出て徐々に株自体のボリュームもアップします。
その後、同じ要領で収穫を続けていくことで、こんもりとした株に育っていきます。
最後に
「神聖」「幸運」「祝福」といった花言葉にもあるように、ホーリーバジルには「幸運を引き寄せて邪気を払う力」があると考えられ、インド以外の国でも縁起物としているところがあります。
長い歴史の中で、メディカルハーブとして多くの人に愛されてきたホーリーバジルは、日常的に食して心も身体も整えてくれる嬉しいハーブです。
初心者でも安心して育てることができますので、是非ご家庭で育てて気軽に料理のお供にしてみてください。
やっぱり「スイートバジル」が好き!という方は下記のページで育て方をご参照ください。