はじめに
春から夏にかけて、多くのハーブが生育期を迎えます。毎日ぐんぐんと成長する様子を見ていると、嬉しい気持ちになりますよね。特に、苗が小さいころから育てたり、種から育てたりした場合、その喜びはひとしおでしょう。
しかし、ただ成長を見守るだけでは、ハーブを健やかに育てることはできません。

初心者によくある失敗として、「茎や葉を切るのが可哀想だから…」と手を加えず放置してしまい、その結果、生育不良を起こしたり、最悪の場合には枯れてしまうこともあります。
「せっかく元気に育ったハーブを切るなんて…」という気持ちはよくわかりますが、実は適切に剪定してあげることで、より丈夫で健康なハーブに育てることができるのです。
この記事では、ハーブを育てるうえで欠かせない「剪定」について、目的やタイミング、方法などをやさしく解説していきます。

剪定の目的

「剪定」とは、植物の茎や枝を切る作業のことです。主な目的は、植物を健康に育て、より美しく整えることですが、具体的には以下のような理由があります。
- 株全体に養分を行き渡らせる
- 蒸れを防ぎ、病気を予防する
- 害虫対策としての効果
- 株姿を美しく整える
それぞれの目的について、ここから詳しく説明していきます。

養分を行き渡らせる

ハーブが順調に育つと、茎や葉の数がどんどん増えます。それに伴い、土から吸い上げる養分の量やスピードも増加します。しかし、茎や葉が増えすぎると、株全体で必要な養分が分散されてしまい、花を咲かせたり新芽を伸ばしたりするためのエネルギーが不足してしまうことがあります。
特に、花が咲く時期や新しい葉が伸びるタイミングでは、植物は通常以上の養分を必要とします。このとき、剪定を行うことで不要な部分を減らし、養分を効率よく必要な箇所に届けることができます。結果として、ハーブはより元気に、健康な状態を保てるようになるのです。
蒸れを防ぐ

日本の気候では、梅雨の時期から多くのハーブが生育旺盛になります。しかし、高温多湿な環境では、茎や葉が密集してしまうと水分がこもりやすくなり、蒸れが発生します。これが原因で根腐れや病気が発生し、ハーブの健康を損ねることがあります。
剪定を行い、茎や葉を適度に間引くことで株元に空間を作り、風通しを良くすることができます。これにより、余分な水分が蒸発しやすくなり、蒸れによるトラブルを予防できるのです。
特に日本のような湿気の多い環境では、剪定は健康なハーブを育てるために欠かせない重要な作業といえます。
害虫対策
どんなに注意を払っていても、環境や時期によってはアブラムシなどの害虫が発生してしまうことがあります。発生してしまった場合、完全に防ぐのは難しいですが、被害を最小限に抑えるためには工夫が必要です。
害虫は、葉と葉が触れ合い密集している場所に隠れやすく、そこから次の茎や葉に移動して被害を広げてしまいます。剪定を行い、葉と葉が干渉する箇所を減らすことで、害虫が広がりにくい環境を作ることができます。
また、害虫の発生は剪定だけでなく、栽培環境や水やりの頻度にも大きく影響されます。普段からハーブの状態をよく観察し、早めに対処することが大切です。
さらに詳しい害虫対策については、以下の関連記事もあわせてチェックしてみてください。
株姿を整える
植物は日当たりや個体差などの影響を受けながら成長しますが、その過程で徐々に株の形が乱れてしまうことがあります。理想的な形に育てたいと思っていても、放っておくだけではなかなか思い通りにはいかないものです。

このような場合、剪定を活用することで株の見た目を整えることができます。特に、ラベンダーやローズマリーなどの低木は、成長に伴い株が大きくなりやすい傾向があります。そのため、剪定時期にしっかりと形を整えておくことで、最終的には美しいバランスの取れた株姿を作ることができます。
剪定を取り入れれば、見た目の美しさだけでなく、健康的で整った成長も期待できます。

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ハーブに有効な剪定方法
「剪定」と一言でいっても、切る箇所や目的によってさまざまな種類があります。庭木などの樹木の場合、「整枝」や「枝透かし」「切り詰め」など、多くの剪定方法が使われます。
一方で、ハーブのお手入れに特に有効なのは「摘心」と「切り戻し」という2つの方法です。この2つをうまく活用することで、ハーブを健康的に育て、理想の形に整えることができます。
摘心とは?

摘心とは、植物の先端の芽(頂芽)を切り取る剪定方法です。植物には「頂芽優勢(ちょうがゆうせい)」という性質があり、脇芽よりも先端の芽を優先して成長させる特徴があります。
摘心を行うことで、先端の芽に集中していた養分が脇芽に行き渡り、枝数が増えて全体的にボリュームアップします。その結果、株全体が健康的に育ち、より多くの収穫量や花数を得られるようになるのです。
摘心は、ハーブをより豊かに育てたいときに欠かせない基本的な方法の一つです。
切り戻しとは?

切り戻しとは、伸びすぎた枝を短く切る剪定方法です。(場合によっては、剪定全般を切り戻しと呼ぶこともあります。)
株元の新芽を残して枝を切り戻すことで、ハーブの成長は止めずに、不要な茎葉を取り除くことができます。この作業により、株元に空間ができて風通しが良くなり、全体の健康を保つ効果が期待できます。
また、切り戻しは株を若返らせ、活力を取り戻すためにも有効です。特に、ハーブを元気な状態で育て続けるためには欠かせないお手入れ方法の一つです。

ハーブの剪定を行う時期

剪定を行うタイミングは、育てているハーブの種類や生育状態、花が咲く時期などによって異なります。厳密に「この時期に行う」と決まっているわけではありませんが、暑さや寒さが和らいでいる春や秋に行うのが一般的です。
以下のようなタイミングが剪定の目安になります。
- 茎の先に花芽がついた時
- 葉や茎が茂りすぎて蒸れてしまいそうな時
- こんもりとした株に育てて収穫量を増やしたい時
- 株が古くなり元気がなくなってきた時
- 開花期を過ぎて、花殻を取り除く時
- 冬越しの準備を行う時
これらのタイミングを参考に、ハーブの状態を観察しながら適切な時期に剪定を行うことで、健康で元気な株を維持することができます。

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最後に
今回は、ハーブの剪定について「なぜ剪定を行うのか?」「いつ行うのか?」という基本的なポイントに絞って解説しました。
実は筆者も、ハーブ栽培を始めた当初は剪定の目的や重要性をよく理解しておらず、「なんとなく形を整えるための作業かな?」くらいにしか考えていませんでした。その結果、適切なケアができずに何度もハーブを枯らしてしまった苦い経験があります。
しかし、試行錯誤しながら摘心や切り戻しを行うようになったことで、ハーブが驚くほど元気に育つようになり、剪定の大切さを実感するようになりました。
これからハーブを育てる方、または育て始めたばかりの方も、本記事を参考に剪定を取り入れてみてください。
特に梅雨から夏にかけての剪定は元気なハーブを育てるために必須の作業です。よろしければ下記の記事もあわせてご覧ください。
