はじめに
私たちの食卓が豊かになった背景には、外食文化の進化とイタリアンの普及があります。特に1980年代後半のバブル期以降、イタリア料理は私たちの暮らしにすっかり根付いていきました。

ピザやパスタを家庭で手軽に楽しめるようになった今、スーパーにはイタリアン食材が当たり前のように並び、その中でもひときわ存在感を放つのが「スイートバジル」。
爽やかな香りで料理にアクセントを加えるこのハーブは、プロのシェフだけでなく、家庭のキッチンでも大活躍。種や苗も簡単に手に入り、ちょっとしたスペースがあれば誰でも育てられる手軽さが人気の秘密です。
この記事では、スイートバジルの魅力と、初心者でも失敗しない育て方をご紹介します。あなたの食卓に、ほんの少しの「香りの魔法」を取り入れてみませんか?

スイートバジルとは?
基本情報

スイートバジル
学名 | Ocimum Basilicum |
別名 | エボウキ、バジリコ etc |
原産 | アジア、中東 |
科名 | シソ科メボウキ属 |
分類 | 一年草 ※地域によっては多年草扱い |
大きさ | 30〜80cm程度 |
開花時期 | 7〜9月頃 |
耐性 | 耐寒性:なし 耐暑性:あり |
活用法 | 主に料理 |
「バジル」と一言でいっても、シナモンの香りがする「シナモンバジル」やレモンの香りがする「レモンバジル」、中には紫色の葉を持つ「オスミンパープルバジル」など実に様々な品種があります。
今回ご紹介するバジルは、その中でも私たちが一番口にする機会の多い「スイートバジル」と呼ばれている品種です。
特徴
スイートバジルは、爽やかな甘い香りとスパイシーな風味が特徴のシソ科のハーブです。原産地では多年草として育ちますが、寒さが厳しい日本では一年草として扱われ、春から夏にかけての温かい季節にその生命力を最大限に発揮します。

夏が訪れると、鮮やかな緑色の葉に囲まれながら、シソ科特有の唇型花(※)が咲き始めます。この花は筒状の花びらが上下に分かれ、まるで小さな唇のような愛らしい形をしています。しかし、実際にはあまり見る機会が少ないかもしれません。というのも、バジルを香り豊かで柔らかい葉の状態でたくさん収穫するためには、苗の段階から芽の先端(花芽)をこまめに切り取ることが重要だからです。

活用方法
料理
スイートバジルは、香り豊かで料理に深みを与える万能ハーブとして知られています。βカロテンやマグネシウム、カルシウム、ビタミン類などの栄養素が豊富に含まれ、ただの風味付けにとどまらず、健康面でも積極的に取り入れたいハーブです。

バジルの香りや風味は熱に弱いため、基本的には新鮮な生の葉を使用するのがベストです。そのままサラダや冷製料理にトッピングすることで、特有の爽やかな香りとほんのり甘い風味が料理全体を引き立てます。特に、イタリア料理では欠かせない存在で、チーズやトマトとの相性は抜群。ピザやパスタに加えるだけで、まるで本格的なイタリアンレストランの味わいに早変わりします。
たくさん収穫できたときには、保存方法を工夫するのもおすすめです。オリーブオイル、ナッツ類、にんにく、塩を合わせて手作りのバジルペーストを作れば、冷蔵庫で長期保存が可能。パスタソースやパンに塗るディップとして、日々の食卓に活用できます。また、市販のドレッシングに刻んだバジルを加えるだけでも、手軽にバジルの風味をプラスすることができますよ。
<筆者のおすすめ活用例>
- バジル×冷奴
刻んだ葉をネギの代わりに冷奴にのせると、シンプルな和風の一品が一気に洋風の前菜に大変身します。オリーブオイルを少し垂らせばさらにおしゃれな仕上がりに。 - フレッシュバジルのサンドイッチ
トマト、モッツァレラチーズ、そしてフレッシュな葉を挟んだサンドイッチは、ヘルシーで満足感たっぷりの一品。 - フレッシュサラダ
レタスやルッコラと一緒にバジルを混ぜ、レモンやバルサミコ酢のドレッシングで仕上げると、爽やかな風味が引き立つ一皿に。

野菜のコンパニオンプランツ

単なるハーブとしてだけでなく、庭や畑でも重要な役割を果たす頼もしい存在です。ナス科(トマト、ナス)、アブラナ科(ブロッコリー、キャベツ)、キク科(レタス、春菊)などの野菜と一緒に植えると、コンパニオンプランツとしての効果を発揮します。
その効果は主に2つあります。
- 害虫の抑制
スイートバジルの芳香は、アブラムシやコナジラミなどの害虫を遠ざける効果があり、周囲の野菜を守る働きがあります。特にトマトと一緒に植えると、トマトの甘い香りに引き寄せられる害虫をバジルがブロックし、収穫量を安定させることが期待できます。 - 成長促進
スイートバジルが発する特有の香り成分は、隣接する野菜の成長を助けることが知られています。特にナスやピーマンと相性が良く、それぞれの収穫時期に良い影響を与えると言われています。
家庭菜園でバジルを栽培する際は、これらの野菜と組み合わせて植えることで、無農薬の自然な害虫対策が可能になります。また、収穫したバジルをそのままキッチンで活用できるのも一石二鳥です!
家庭菜園のコンパニオンプランツとしてハーブを取り入れたい方は下記のページもあわせてご覧ください。

スイートバジルの育て方
育てやすいため初心者にぴったりのハーブです。鉢植えやプランターでも簡単に栽培できるため、ご自宅でよくイタリアンを楽しむ方には特におすすめです。
栽培環境
日当たりが良く水はけの良い場所 を好みます。ただし、強い直射日光を浴びすぎると葉が固くなるため、真夏の日中は半日陰に移動させると柔らかい葉を保つことができます。
苗の準備

ホームセンターや園芸店では苗やタネが簡単に手に入ります。お店によっては「レモンバジル」や「シナモンバジル」などの別品種も販売されているので、興味があれば問い合わせてみましょう。近くで見つからない場合は、ネットショップを活用するのも一つの方法です。
スイートバジルの苗やタネはこちらから


種から育てる場合

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▶︎ 発芽適温 は20〜25℃で、春まきなら4〜6月、秋まきは9〜10月が適しています。
▶︎タネは 好光性種子(光が必要な種)なので、薄く2mm程度の覆土にするか、覆土せずに軽く鎮圧する程度でOKです。
▶︎発芽するまでは、土が乾燥しないようにこまめに水やりを行いましょう。ただし、タネが流れないように霧吹きを使うのがおすすめです。

環境によりますが、発芽には7〜10日程度かかります。双葉が出たら、生育が良い苗を選んで間引きし、競合しないようにしましょう。
<間引きの目安>
- 双葉が生えそろったら1回目の間引き
- 本葉が2〜3枚になったら2回目の間引き
- 最終的に鉢やプランターの大きさに応じて間引き、5〜6号鉢なら1株、7〜8号鉢なら2〜3株程度を残すのが理想です。
苗から育てる場合
苗を植える場合は、 株と株の間に15cm程度の間隔 を空けましょう。風通しが良くなることで、病気や害虫の発生を防げます。

自分で土をブレンドする場合は、小粒の赤玉土7に対して腐葉土3の割合がおすすめです。これで水はけと保水性のバランスが取れ、根がしっかりと張ります。
中性〜弱アルカリ性 の土が最適です。市販の「元肥入りの園芸用土」や「ハーブ用の土」でも十分育ちます。
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日常管理
◆水やり
地植えの場合、根付いてからは水やりの必要がありませんが、乾燥した日が長く続くようでしたらしっかりとあげましょう。
鉢植えの場合は、表面が乾いたらたっぷりと与えます。
梅雨の時期は湿度と日照不足が原因となり徒長しやすいので、水やりの頻度は少なめにしましょう。
◆肥料
園芸用土を使う場合、元肥は要りません。葉(特に下の葉)が黄色っぽくなってきた場合は、肥料切れのサインですので、液肥で2週間に一回程度養分を補ってあげたほうが安心です。
◆剪定
花をつけてしまうと、葉が硬くなり風味も落ちますので、花芽を見つけたら早めに切り取りましょう。
7月〜8月にかけては、一度深く刈り込むことで長期間収穫できるようになります。
◆病害虫
コンパニオンプランツとしても優秀なだけに、害虫を惹きつけやすい性質をもっています。
特にアブラムシが発生しやすく新芽につくと生育を阻害しますので早めに駆除しましょう。
害虫の予防と駆除に関しては下記のページを参考になさってください。
収穫

最上部の葉を、剪定も兼ねて 4枚程度を茎ごと 収穫するのが基本です。このとき、脇芽が伸びやすくなるように、収穫は必ず茎の節のすぐ上で切り取りましょう。こうすることで、次々に新しい脇芽が成長し、株全体のボリュームが増してこんもりとした形に育ちます。
ポイント:収穫をこまめに続けるほど、健康的な葉がたくさん育ち、株自体も丈夫になります。タイミングを逃さずに剪定・収穫を行いましょう!
スイートバジルの保存方法
収穫した葉は、 冷蔵保存 と 冷凍保存 の2つの方法で長く楽しむことができます。
冷蔵保存の方法(約1週間保存)
- 保存容器に 湿らせたペーパータオル を敷き、バジルの葉を優しく並べます。
- 上からもう一枚の湿らせたペーパータオルをかぶせ、容器のフタを閉めて野菜室 へ。
- 葉が傷まないように、ぎゅうぎゅうに詰め込まないことがポイントです。
- 2日に1回ペーパータオルを新しいものに取り替えれば、約1週間鮮度を保つことができます。
冷凍保存の方法(約1ヶ月保存)
- 収穫したバジルの 茎を取り除き、軽く洗った後に水分をしっかり拭き取ります。
- 葉が傷まないようにフリーザーバッグに入れ、 なるべく空気を抜きながら密閉 します。
- 葉同士がくっつかないよう、袋の中に少し空間を残しておくのがポイントです。
- 冷凍庫で保存し、使用するときは 解凍せずにそのまま調理に使いましょう。

最後に
今回は、爽やかな香りと万能な使い勝手で多くの人に親しまれている 王道のハーブ「スイートバジル」 についてご紹介しました。
バジルはイタリア料理だけでなく、さまざまな料理にマッチするため、家庭で育てて新鮮な状態で収穫することで、その香りや風味をより豊かに楽しめます。さらに、育て方も簡単なので、初心者の方でも気軽に挑戦できるのが魅力です。
毎日使うハーブを自分で育てれば、食卓がより充実し、料理の幅も広がるでしょう。バジルを栽培して、いつものパスタやサラダに特別な香りをプラスしてみませんか?
また、 ルッコラやコリアンダー、ミントなど他のキッチンハーブと寄せ植えする のもおすすめです。それぞれのハーブが放つ香りが互いに調和し、小さなプランターでも家庭菜園が楽しめます。ハーブごとに異なる収穫の楽しみを味わいながら、育てたての新鮮な香りをぜひ日々の食事に取り入れてください!
新しい発見と楽しさが詰まったハーブ栽培に、ぜひトライしてみてくださいね!
