はじめに
春から夏にかけてポンポンのような花を次々と咲かせるチャイブは、お庭の雰囲気をふんわりと柔らかくしてくれる可愛らしいハーブです。
観賞用としてもちろん十分楽しめますが、何よりもチャイブの魅力は和食でも洋食でも絶妙にマッチするという点にあります。
「薬味」といえば、ネギやアサツキを思い浮かべる方が多いかと思いますが、今回ご紹介するチャイブも全く同じように薬味として使うことができます。
長ネギよりもちょっとマイルドでクセのない風味があるため、子供でも嫌がらずに食べることができます。
ネギ類の栽培は菜園がない方にはハードルが高く、中々家庭で自給するのは難しいものですが、チャイブであれば、ベランダなどちょっとしたスペースを使って鉢植え栽培が可能です。
ということで、今回は、観てよし・育ててよし・食べてよしの薬味系ハーブ「チャイブ」についてご紹介していきたいと思います。
チャイブについて
基本情報
チャイブ
学名 | Allium schoenoprasum |
別名 | セイヨウアサツキ、エゾネギ、 シブレット etc |
原産 | ヨーロッパ、アジア |
科名 | ユリ科ネギ属 |
分類 | 多年草(宿根草) |
大きさ | 20〜40cm程度 |
開花時期 | 5〜6月頃 |
耐性 | 耐寒性:あり 耐暑性:あまりない |
活用法 | 主に料理 |
チャイブはユリ科の多年草で、ピンクから薄紫色の丸い球体状の花、中が空洞になった細長い葉が特徴のハーブです。
歴史は古く、中世ヨーロッパ以降、食用や薬用の目的で栽培されてきました。
また中国でも紀元前から育てられ、同じく料理や薬として用いられていた記録が残っています。
日本ではセイヨウアサツキ(またはエゾネギ)と呼ばれ、一般的に私たちが「アサツキ」と呼んでいるものはチャイブの変種とされています。
「チャイブ」と「アサツキ」って花の印象も使い方もなんだか似てますよね。。。
↑アサツキの球根
一番分かりやすい見分け方は、根っこの部分を観察することです。
掘り上げてみるとアサツキには丸く膨らんだ球根がついており、チャイブは細長い根を張っています。
多年草なので毎年株が少しづつ大きくなっていきますが、冬は生長が止まり一旦地上部が枯れ、春にはまた株元から新しい芽を出します。
5〜6月頃には花を咲かせ、その可愛らしい形で私たちの目を楽しませてくれます。
たくさん栽培しているところでは、群生したチャイブが花畑となって見事な光景を見せてくれます。
中には白い花を咲かせる種類もあり、一般的なピンクのものと印象も違って爽やかな感じがします。色合いの違いを利用して花壇花としても重宝するハーブです。
活用方法
チャイブは主に料理の材料として使用し、基本的には細ネギと同じように使います。
香りが比較的マイルドなので生食に向いており、ネギが苦手な方でも「チャイブなら大丈夫」という方もいるくらいです。
まずは生食で定番の使い方「薬味」です。
チャイブは和食・洋食・中華、その他の幅広いジャンルの料理に薬味やトッピングとして非常にマッチします。
クセが少ないので、地味な色合いの料理やデザートに少量ふりかけるだけでも味を邪魔せずに色合いを加えることができるのも嬉しい点です。
薬味以外にも、少し長めに切ってサラダの具材にしたり、細かく刻んでドレッシングやソースの具材としても楽しめます。
花の部分はエディブルフラワーとして利用できますので、トッピングとして載せ、そのまま食べることができます。
チャイブにはネギやニラと同じく、「硫化アリル」という成分が含まれており、消化液の分泌を促してビタミンB1の吸収を高めてくれます。
つまりビタミンB1を含む豚肉料理とは非常に相性が良いということになります。
細かく切らずにお肉と一緒に炒め物にしても美味しく食べられますが、実はこの硫化アリルという成分は熱と水に弱いため、火を通すと消失して別の成分に変わってしまいます。
できればお肉料理の付け合わせとして、生で使用することをおすすめします。
下記のページでは、ハーブを料理するときに便利なアイテムをご紹介しています。ご興味ある方はあわせてご覧ください。
チャイブを育ててみよう!
種まき&植え付け
生育環境としては、日当たりが良い場所を好みますが、半日陰でも育ちます。
窓際に日当たりの良いスペースがあれば室内でも栽培が可能です。
花が咲いてしっかりと収穫できるようになるのは種まきの翌年(2年目以降)になりますので、早めに楽しみたい方は苗を入手しましょう。
<種子から育てる>
▶︎発芽温度は20℃前後。
▶︎春まきは3〜5月頃、秋まきは9〜10月頃です。
▶︎地面に直接播いても良いですし、育苗ポットに播いても良いです。
▶︎種子をばら播きするように薄く均等に播き1cm程度覆土して、日当たりの良い場所で乾燥しないように管理します。(育苗中は乾かないように水やりを行います。)
▶︎環境にもよりますが、1〜2週間程度で発芽します。
▶︎発芽後した後は、葉と葉が触れ合わない程度に間引きます。
▶︎(育苗ポットに播いた場合)丈が10cm程度になったら地面に植え付けます。
<苗の植え付け>
チャイブは横に大きく伸びる植物ではありませんので、複数の株を植え付ける場合は、20cm程度の間隔を空ければ十分です。(直播きの場合は、株間の距離を予め想定して播きましょう。)
一本ずつよりも数本まとめて植えた方が生育が良いため、一箇所に2〜3本の苗を一緒に植え、その後は間引きの必要はありません。
年々生長するに従って根が分かれ大株になってくると生育が悪くなることがあります。
掘り上げて株分けし、複数の鉢に移したり別の場所に植えて増やしましょう。
ちょっとスペースは必要になりますが、株が大きくなって増やせるなんて嬉しいですね。
順調に育てることができれば、もう苗や種子も買う必要がなくなりますね。
高評価のおすすめ苗↓↓
土は市販の元肥入り園芸用土で問題ありません。
チャイブは中性〜アルカリ性土壌を好みますので、庭や畑の土をそのまま使用する場合は、苦土石灰を混ぜ込んで少しアルカリ性に傾けてあげましょう。(苦土石灰は1㎡に対して100g程度が目安。)
ご自身でブレンドするのであれば小粒の赤玉土7に対して腐葉土3くらいの割合がおすすめです。
植え付け穴をあけたら、たっぷりと水を含ませてから定植します。土を被せたらしっかりと株元に圧をかけてあげましょう。
日常管理
◆水やり
地植えの場合は、根付いた後の水やりは必要ありません。
ただし、乾燥し過ぎると葉が折れたり葉先の色が茶色っぽくなりますので、日照りが何日も続くような場合はたっぷりと水を与えましょう。
鉢植えの場合は土の表面がやや乾いたら、鉢底から余分な水が流れ出るくらいしっかりと与えてください。
◆剪定(摘花、切り戻し)
葉の長さが約20cmくらいになったのを目安として、収穫も兼ね株元から5cm程度切り戻します。
花が咲いてしまうと茎葉が硬くなりますので、収穫をメインに育てている方は蕾のうちに花を摘み取りましょう。
◆肥料
土の肥料分がなくなってくると葉が黄色くなってきます。
あくまで様子を見ながらですが、生育期には水やりのついでに液体肥料を与えるか、株元に緩効性肥料を置いてあげましょう。
◆病害虫
新芽や花にアブラムシが発生することがありますので発見したら早めに駆除します。
害虫対策については、下記の記事でもう少し詳しく解説しています。よろしければご覧ください。
収穫
20cmくらいに育ったらいつでも収穫OKです。(暑い時期はより辛みが増します。)
前述の通り、株元から5cm程度残して収穫すれば、また次の葉が出やすくなります。
チャイブは他のハーブのように乾燥させて保存するのには向いていませんが、生のまま細かく刻んで冷凍保存することは可能です。
たくさん収穫した時は、ドレッシングの具やトッピング用のストックとして保存しておきましょう。
ペットを飼っている方は注意が必要です。
チャイブはネギ属の植物です。
ネギ類は犬や猫にとっては危険な食べ物ですので、誤って食べてしまった場合は体調を崩したり、最悪の場合は命に関わることもあります。
もしを飼っている方は栽培を控えるか、十分安全性を管理できる環境で行ってください。
家計に優しいハーブです!
私たち日本人は薬味が大好き。ネギだけでも一世帯あたり年間で平均約3〜4千円程度を支出しているというデータもあります。(参照元:食品データ館「【都市別】ねぎへの支出額・消費量ランキング」)
一方、チャイブの苗は300〜400円程度で、半年間は育てながら収穫して食べることができます。
(種子から育てれば一株あたりのコストが更にグッと低くなります!)
栽培を始めるときには鉢や土を買う必要がありますが、多年草なので翌年もまた青々とした新芽を出してくれますし、株分けしていけば増やしていくこともできます。
つまり、しっかり長期にわたって育てていくほどコスパが良くなっていくというわけです。
もちろん、ネギにはネギの良さがあるわけですから、全ての料理にチャイブで代用できるわけではありませんが、代用できるメニューには是非積極的に活用したいですね。
最後に
今回ご紹介したチャイブの他にも料理の材料として優秀なハーブには様々な種類があります。
セージやタイム、オレガノなどはどうしても欧米系の料理に使用することが多く、あまり普段使いもできませんが、チャイブは和食とのマッチングも最高で汎用性が高いという点でもおすすめです。
また、薬味として使うことだけを考えてもコスト面での優位性が高いので、ご家庭の常備野菜としても重宝されること間違いなしです!
「食べるものを少量でも自給できる」ということは結果的に節約に繋がり、いざという時の備蓄にもなりますので、ぜひ今回ご紹介したチャイブから自給自足をはじめてみましょう。
他にも家庭で簡単に育てられるキッチンハーブがありますので、ご興味ある方は下記のページもあわせてご覧ください。