はじめに
春先は気温も徐々に上がりはじめ、多種多様な苗が並び始める時期。園芸店では「これから何を育てようかな〜」とワクワクしながら苗の品定めをする方々を多く目にします。
筆者が以前勤務していた園芸店のお客様には「良い苗を選んでもらえますか?」とよくお声がけをいただき、当時は喜んでお手伝いさせていただきました。
しかし、、本音を言いますと、園芸初心者であればあるほど自分の目で苗選びされるすることをおすすめします。
良い苗を選ぶ「目利き力」を養えば、いつでも丈夫な苗を手に入れることができるようになり、更には、そのお店が信用できるお店なのかどうかも判断できるようになります。
今回は、丈夫な苗を手に入れたい、目利き力をアップしたい、という方のために、良い苗を見分ける5つのポイントをご紹介したいと思います。
健康な苗を見分ける5つのポイント
全体感
まず最初に見るポイントは、目に飛び込んだ苗全体の印象です。
なんだか曖昧だな。。。と思う方もいるかもしれませんが、これが意外に大切なポイントなんです。
簡単に言えば、パッと見た時「全体的に生き生きしており、がっしりとしている」のが良い苗です。
元々自然の中で暮らしていた人間は、食料を探すために栄養価の高い植物、健康な植物に対して「目利き力」を持っていました。
感覚的なことになりますが、現代の私たちも少なからずそんな能力を秘めています。
皆さんも直感を信じて物事が上手くいった経験をお持ちかと思いますが、第一印象で選んだ苗は不思議と丈夫で愛着が湧く傾向も高いのです。(もちろん、心理的作用も影響していると思います。)
「がっしりとしている」印象とお伝えしましたが、他の苗と比べ大きいからといって必ずしも「健康な苗」とは限りません。
色々な苗を見ていくと徐々にわかってきますが、サイズが大きいわりに茎葉がひょろっとしている苗には全体的に貧弱な印象があります。
逆に、小さくてもがっしりとした印象の苗には、細かく見ると葉色が良く茎もしっかりしているものが多いのです。
まず細かいところを見る前に、株姿から受ける全体的な印象を感じ取ってみましょう。
葉色
次に、植物の「顔」とも言える葉っぱをチェックします。
プロの苗屋さんであってもまず先に見るところはこの葉っぱの様子です。
具体的なポイントは、葉の色が濃く、水々しさがあるかどうかです。
植物は光を受けてデンプンなどの養分を作り出しています。つまり「光合成」をして生長します。
光合成は「葉緑体」という器官で行われ、この葉緑体には「クロロフィル(葉緑素)」という緑色の色素があります。
これこそが植物の葉が緑色である理由です。(※植物の中にはクロロフィルを持たないものもあります。)
つまり、緑色の葉がしっかり付いているということは、光合成ができている証明であり、健康な苗であるということが言えるのです。
そして健康な植物は新芽をつける力を持っているため、必然的に葉の数も増えていきます。
逆に、葉の色が薄く黄色っぽいものは光合成をする力が弱く、元気のない苗です。
光合成の力が弱まる原因としては、根から吸い上げるだけの養分を切らしてしまっている場合(肥料切れ)や、病害虫による被害が考えられます。
前者の場合は肥料を補給してあげることでまた元気になる可能性はありますが、後者は養生が必要となりますので、購入する際には誤って選ばないようにしましょう。
葉の裏
葉色を見るときに同時やっておきたいのが、葉裏のチェックです。
なぜ葉の裏をチェックするかというと、虫がついていないかどうかを確認するためです。
気温と湿度が上がって来る季節になると、アブラムシやハダニなどの虫がつき食害や病気のもとになります。
これらの虫は、主に茎、葉の表面、葉の裏につきますが、お店の方がどんなに日常管理をしっかりしていても、葉裏の虫は見落としやすく、購入する皆さんも事前にチェックできるようにしておいた方が安心です。
植物につく小さな虫は繁殖力も強く、早期に対処することが非常に大切です。
もし店頭で虫を見つけたら店員さんにも教えてあげましょう。
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株元(根元)
葉の様子がある程度把握できたら、次は株元(根元)をチェックしましょう。
チェックするポイントは、グラグラしていないかどうかです。
「根がグラグラしている」ということは根がしっかりと張っていないことを示します。
見た目は茎がしっかりと上に長く伸びている苗でも、単に徒長(※)している場合は、地表より上の部分だけが過剰に生長してひょろっとした印象があります。
地上部の生長だけが過度に進み、根の成長がついていけなくなると茎の丈夫さが不足し、折れやすくなったり養分が行き渡らなくなります。
逆に、見た目には普通なのに根が成長し過ぎているケースもあります。所謂「根詰まり」している苗です。
園芸店で売れ残ったほとんどの苗は、次のお客様に購入されるまでの間、そのままポット苗の状態でお店の中で管理されます。
小さなポットに入っている苗は日を追うごとにそのポットの中で根を伸ばしていき、その結果、土の中に張り巡らせた根っこによって徐々に窒息状態に陥り、水分や養分の吸収がままならない状態になります。
一目見ただけでは分からない根詰まりですが、表面の土に触れたり、プラスチックの苗ポットであれば横から少し圧力をかけてあげると、その硬さの感じで状態を知ることができます。
ジュースの缶を握りつぶすような感じで(→もちろん軽く握ってください!)少し圧をかけ、パンパンになっていたら根詰まりしている可能性が高いです。
土の表面
土の表面のチェックは、カビやコケが生えていないかどうかを確認するためです。
カビやコケの主な原因は、過湿または水のやり過ぎや水はけの悪さです。
もし土の表面が白っぽくなっていたり、緑色になって湿っていた場合はカビやコケの可能性があります。
そのままにしておくと水分や肥料分を奪い取ってしまいますので注意しましょう。
有機質の肥料を含む育苗土を使用している場合は自然と白カビが発生することがあり、逆に無害で有機物の分解に役立っていることもあります。
苗を見ればお店の質もよくわかる
園芸店の評価は苗の質で決まるといっても過言ではありません。
苗の質が良いということは、日常管理が行き届いているということです。日常管理ができているお店には植物が本当に好きで働いているスタッフ、栽培の知識をしっかり持っているスタッフが必ずいます。
苗の管理というのは非常に大変なものです。特に日本のような湿度の多い気候では病害虫も発生しやすく、気を配りながら日々管理しなくてはなりません。
しっかりと良い苗を提供し続けているお店には、それだけ熱心でスキルの高いスタッフがいるということですので、いざという時に安心して相談できる環境があります。
もちろん、雰囲気、立地やサービスの良さなども大切ですが、皆さんが頻繁に利用するお店を探すときは「苗の管理がしっかり行き届いているお店」が絶対におすすめです。
まずはお近くのお店に足を運んで、実際に店頭の苗を見てまわりましょう。きっとどんなお店なのか見えてくると思います!
園芸店のスタッフと良い関係が築けるようになると、栽培のコツや知らない植物のこと、おすすめの肥料など色々な情報を教えてくれます。
皆さんの知識レベルもみるみるうちにアップしますので、是非スタッフさんと仲良くなりましょう!
まとめ
・全体的に生き生きと水々しい
・茎が太く葉に厚みがある
・葉の色が濃い
・株元が安定している
・新芽が吹き出している
・茎が細く弱わしい
・葉の色が薄く黄ばんだり黒くなっている
・株元がグラグラしている
・虫がついている
・土の表面にカビや苔が生えている
・根詰まりしている
最後に
今回は健康な苗を見分けるためのポイントをいくつかご紹介しました。
今までお店の人に全てお任せしていた方や、何となく感覚だけで選んでいた方は、是非今回ご紹介した5つのポイントを参考に苗選びをしてみてください。
もちろんハーブだけに限らず野菜や花の苗にも共通する部分がありますので、丈夫な苗を選ぶ際に応用していただければ幸いです。
下記のページは、ホームセンターの苗について取り上げた記事です。ご興味ある方はあわせてご覧ください。