「オーガニック」ってなんだろう? 有機栽培との違いは? 定義を解説!

はじめに

皆さんは、農産物や加工品を購入する際に「オーガニック」や「有機」という言葉をどの程度意識していますか?

株式会社ネオマーケティング(東京都渋谷区)が、2022年に20〜69歳の男女400名を対象に実施した調査結果によると、回答者の9割以上が「オーガニック製品は、非オーガニックのものと比べて高い、またはやや高い」と感じていながらも、6割以上は少なくとも月に3,000円をオーガニック製品に費やしていることが分かります。

(データ参照元:プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPR TIMES)


2015年の国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)の影響もあり、これまで国内ではあまり取り上げられてこなかった「オーガニック」や「有機栽培」という言葉が、今ではメディアでも頻繁に取り上げられ、社会的にも生産や消費の傾向が変わってきました。

オーガニック製品を購入する理由としてよく挙げられるのが、「安心安全だから」「環境に配慮しているから」「質が高いから」という答えです。

では私たちは「なぜ安心なのか?」「なぜ環境に配慮されているのか?」「なぜ質が高いのか?」という質問に対して、どれだけ具体的に答えられるでしょうか。

オーガニックのもつ意味や定義については、消費者だけでなく、実は多くの農家さんも完璧に理解している人が少ないというのが現状です。

今回の記事は、あらためて「オーガニックや有機って何?」「どんな定義なの?」といった疑問にお答えする内容になっています。

なんとなく分かるような,,,分からないような,,,という方は、本記事を参考に少しでも理解を深めていただければ幸いです。



オーガニックと有機の違い

オーガニック(Organic)とは、そもそも「有機的な」という意味の言葉です。

園芸や農業にあてはめて説明しますと、主に「有機農法有機栽培」を意味する言葉で、その有機農法で作られた作物をオーガニック野菜や有機農産物と呼びます。

つまり、食料品を買うときに「オーガニック○○」と表示されている商品と「有機栽培○○」と表示されているものがある場合は、どちらも有機農法で育てられたもの(もしくはそれらを利用して加工されたもの)という認識で問題ありません。


有機栽培の定義

国が平成18年度に策定した「有機農業推進法」によれば、有機作物を育てるための農業の定義は下記のようなものです。


「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業」


、、、ちょっとわかりにくいな…という方のために、もう少しシンプルにご説明します。

「有機農法」とは・・・

・農薬、化学的な肥料は使用しない。
・遺伝子組み換え技術を一切使用しない。
・環境ダメージが少ない方法で生産する。


もし、育てている野菜や果物などを「有機農産物」と称して販売したい場合には、公的に認定を受ける必要があります。

 

皆さんも普段から目にする、「有機JASマーク」の表示をする為の認定です。

この認定を受けるためには、種蒔き前3年以上及び栽培している期間中は、禁止された農薬と化学肥料を使用せず作物を栽培しなければなりません。

 

また、認証機関が認めている資材以外のものは、自身で使用しないだけでなく、近隣から飛散してこないように対策をしなくてはなりません。



日本で中々浸透しない理由

冒頭で、オーガニックを完璧に理解している農家さんは少ないとお伝えしましたが、誤解がないように、もう少し補足して言い換えますと、、

一般的な慣行農業(※)を生業としている農家さんの中には、オーガニックのことを具体的に理解している人が少ない」ということです。

(公的に認定された有機農家さんは、当然しっかりと理解されているはずです。)

慣行農業
= 作物の収穫量や規格に重きを置き、法律に定められ基準内で農薬や化学肥料を使って栽培する農業のことです。日本の農家さんの殆どはこの慣行農業を行なっています。

私たち消費者も含めて、一般的に「オーガニック」や「有機」の定義がしっかりと浸透していないのか、そこには国内の普及不足が大きな原因となっているように思います。



普及不足の現状(理由)

日常的に「有機(オーガニック)」というキーワードに触れていると、日本全体で意識が高まっているような感覚に陥りますが、現実としてはまだまだこれからといった状況です。


耕作地が少ない

農林水産省の調べによると、日本の有機農地面積は2020年の時点で国内全体の耕作面積のうち0.6%です。

これは単純に考えると、同じ面積の畑が166枚あったとして、そのうちのたった1枚が有機栽培の畑ということになります。

比較データとしてヨーロッパ諸国(EU加盟国)を例に挙げますと、
同じく国内耕作面積に占める有機農地の占有面積は、オーストリアで23.4%、エストニアで19.6%、スウェーデン19.2%、イタリアで14.9%というデータがあります。(EU加盟国の平均値は7%)

参照元:独立行政法人 農畜産振興機構 「図4 国別有機農地面積シェア」

上記の通り、EUトップのオーストリアでは約4枚に1枚の畑が有機栽培を行っている計算になります。

この数値を見ていただくだけでも、日本の有機栽培品の自給率がいかに低いかお分かりいただけると思います。



今後の展望

諸外国と比較してだいぶ遅れをとっている日本の有機農業ですが、裏を返せば、まだまだ伸びしろがあるということです。

農林水産省は食糧生産の方針として、2021年に「緑の食糧システム戦略」を発表しています。

その中には、2050年までに化学肥料の使用量を30%低減、耕作地に占める有機農業の取り組み面積を25%(100万ha)に拡大する、などの数値目標も盛り込まれています。

現状を鑑みると、中々ハードルが高いと感じますが、消費者の意識も生産者の意識も徐々に高まっている状況を追い風に、少しでも目標に近づいていくことを期待しています。



もっと普及するために

ここまでは主に生産者サイドの事情に偏ったお話になりましたが、結局のところ、オーガニックを一般的なものとして普及させるために一番大切なのは「消費者の意識」だと考えます。

いくら日本の有機農地の割合が増えても、そこで作られた野菜や果物を消費者の私たちが買わなければ絶対に普及はしません。

そこには、『生産者が作るのは消費する人たちがいるから、消費者が買えるのは作る人たちがいるから』という共存の仕組みが確立されていることが大切です。

もう生産者だけが頑張る時代は終わったのだと感じています。

更に付け加えれば「販売者」の意識も非常に重要なポイントとなります。

 

生産者と消費者の中間に介在する販売者は、オーガニック普及のキーマンとなる存在です。

 

生産者と消費者の利になる事業を行いつつ、継続して商品やサービスを提供するために自身の利益もしっかりと確保していかなくてはなりません。



また、「有機オーガニック)を普及させるためには」単に生産者任せにするのではなく、家庭菜園なども大きな役割を果たしていくと考えています。

本記事の冒頭で示した通り、殆どの方が「オーガニック製品は、非オーガニックのものと比べて高い」と感じています。

その為、オーガニック製品を選びたいけど、経済的な理由で中々手が出ないという方も実際多いことでしょう。

そんな時は是非自宅で育てる」という選択肢も検討してみてください。

もし庭やベランダなどで、いつもスーパーで購入している食材の一つでも自給することができれば、安心安全と経済的負担の軽減という二つの豊かさを手に入れることができ、各家庭が主体となって自給率の向上やオーガニックの取り組みへとつながることでしょう。



海外には、オーガニック栽培をベースとした家庭菜園のコツを教えてくれるチャンネルがたくさんあります。

おすすめのチャンネルを別途記事にしておりますので、是非ご覧ください。


有機栽培についての書籍をチェックしてみよう

最後に

紐解いてみると実は結構複雑で、色々な課題を秘めている「オーガニック / 有機」というトピックを取り上げてみました。

オーガニックの分野において成長期にある日本では、まだまだ生産者同士の繋がりが希薄で、一部の方の特別な農法として存在しているような印象があり、社会全体が足並みを揃えて取り組めるようになるまではもう少し時間がかかりそうだと感じています。

本記事の内容は、オーガニックというものを理解する為のあくまで初歩的なものに過ぎませんが、皆さんの理解が少しでも深まり、普段何気なく接しているオーガニックや有機というイメージが具体化される一助になれば嬉しく思います。




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