はじめに
『魚料理との相性が良い定番ハーブは?』
という質問をした時に、よく挙げられるのが「ディル」や「フェンネル」です。
どちらも魚の臭みを消すのが得意で、爽やかな風味と苦味が特徴のハーブ。
細い葉と黄色い花が非常に似ているため、見慣れていない方にとっては判別しにくいハーブと言われます。
今回はそんな似たもの同士「ディルとフェンネル」について、それぞれの違い(判別方法)と育てるときの注意点について解説させていただきます。
基本情報
見分け方のポイントをお伝えする前に、まずはディルとフェンネルそれぞれの特徴を見ていきましょう。
ディル
学名 | Anethum graveolens |
別名 | イノンド |
原産 | 地中海沿岸、西アジア |
科名 | セリ科(イノンド属) |
分類 | 一年草 |
大きさ | 60〜80cm程度 |
開花時期 | 5月〜7月頃 |
耐性 | 耐寒性:あり 耐暑性:なし |
活用法 | 主に料理 |
フェンネル
学名 | Foeniculum vulgare |
別名 | ウイキョウ etc |
原産 | 地中海沿岸 |
科名 | セリ科(ウイキョウ属) |
分類 | 多年草 |
大きさ | 100〜200cm |
開花時期 | 6月〜8月頃 |
耐性 | 耐寒性:あり 耐暑性:あり |
活用法 | 主に料理 |
使い方も全体的な印象も似ているので、見慣れないうちは「どっちがどっち?」と思うこともありますが、ポイントを絞って観察していくと徐々に全く違う植物として判別できるようになってきます。
違いを見分けるポイント
ライフサイクル
ディルは一年草で、毎年種から育てなくてはならないハーブです。
一方、フェンネルは多年草で、冬越しさせることで株が毎年大きく生長します。
背丈
生長するとフェンネルはディルよりも大きくなります。
ディルは60〜80cm程度の草丈ですが、フェンネルは生長すると1mを超えます。
栽培適温
フェンネルのほうが栽培適温が高く夏越しもしやすいですが、ディルは比較的暑さに弱いので夏の終わり頃には寿命を迎えてしまいます。
葉の形
一見するとどちらも同じように見えますが、よく観察すると違いがわかります。
ディルは「繊細な細葉」といった印象ですが、フェンネルは更に細い「糸状の葉」です。
葉の色
生長過程や状態によって若干異なる場合はありますが、ディルの方が濃い緑色、フェンネルは薄く黄緑に近い色です。
風味
どちらも爽やかな香りと苦味が特徴ですが、芳香の強さではフェンネルのほうが勝ります。
同じように料理に使えますので、どちらを使うかはお好みで選びましょう。
根元
フェンネルは根本に玉ねぎのように膨らんだ鱗茎(りんけい)を形成しますが、ディルに鱗茎はありません。
フェンネルの鱗茎
フェンネルの鱗茎はイタリアで「フィノッキオ」と呼ばれ、ポピュラーな野菜としてサラダやスープの材料として使用されます。
フィノッキオとじゃがいものスープ by Yokchina育てるときの注意点
ここまでの説明でそれそれの違いがお分かりいただけたかと思いますが、栽培する際には共通して注意しなければならないことがあります。
交雑しやすい
ディルとフェンネルを近くに植えてしまうと、花粉が飛び混じって交雑することがあります。
交雑した雑種は香りも質も劣る子孫になるため、もし両方を育てたいという方は同じ場所や同じコンテナ内での寄せ植えを避け、できるだけお互いの距離を離して育てましょう。
特にフェンネルは、豆類やトマトとの相性も悪く、お互いの生長を阻害しますので近くには植えないようにしましょう。
植え替えをしない
ディルもフェンネルも「直根性植物」で、植え替えの時に根に負担がかかるのを嫌う性質を持っています。
なるべく直播きで育て、移植しなくても良い方法を選びましょう。
直根性植物について、詳しくは下記のページで解説していますのでご参照ください。
倒れやすい
どちらも背丈のわりに茎が細いので、強風に晒されると倒れたり折れたりすることがあります。
ある程度の高さになったら、支柱を立てるなどして養生しておきましょう。
最後に(まとめ)
今回は、似て非なるハーブ、ディルとフェンネルの見分け方を中心に解説させていただきました。
以下は、記事のまとめと補足です。
ディル | フェンネル | |
分類 | 一年草 | 多年草 |
風味 | 控えめ | 強め |
葉形 | 繊細な細葉 | 糸状の葉 |
葉色 | 濃いめ | 薄め |
背丈 | 低い (60cm程度) | 高い (1m以上) |
栽培適温 | 15〜20℃ | 20℃〜25℃ |
根 | 鱗茎なし | 鱗茎あり |
・料理の風味付に使いたいけど、香りが強いのはちょっと苦手。
・毎年種を播くのが好きで全く苦にならない。
ディルの育て方については下記のページをご参照ください。
・爽やかでスパイシーな苦味が好き。
・毎年株を更新するのが面倒。
・葉だけでなく鱗茎(フィノッキオ)も収穫したい。
フェンネルの育て方については下記のページをご参照ください。
ディルやフェンネルの種苗をお探しの方はこちらから混植しなければ、どちらも他のキッチンハーブと寄せ植えして楽しむことができます。
下記のページを参考に栽培にチャレンジしていただければと思います。