はじめに
私が以前勤めていた園芸店(=ハーブ苗専門店)のお客様には、「ホームセンターで買った苗がどうも弱くて、、植え付けたら枯れてしまったんです、、」という方がよくいらっしゃいました。
苗自体が弱いのか、それとも初期の育て方に問題があったのか、正直なところ、さらに詳しくお話を聞かないと具体的な判断は難しいです。
しかし、同じような相談を何件も受けた経験があり、苗の質について意外にも多くの方が疑問に思っていると感じましたので、筆者の経験も踏まえ本記事にて取り上げてみました。
筆者自身も日常的に大型のホームセンターを利用しますが、品揃えや利便性の面において普通の園芸店にない多くの利点があると感じています。
ただし、ハーブ苗の質については、実際に色々なお店を見てきた経験から、ちょっと気になる点があるのも事実です。
今回は、ホームセンターで扱う苗は良いのか?悪いのか?というテーマです。
もし苗を購入した経験がある、またはこれから購入する予定という方は本記事の内容を参考にしていただければ幸いです。
尚、本記事はハーブ苗についての記事であり、その他の花苗や樹木の苗木全てに関してあてはまるものではありませんので予めご了承ください。
ホームセンターの苗は良いの?悪いの?
まず結論から言いますと、、ホームセンターのハーブ苗が良いか悪いかは一概に言えません。
いきなり曖昧な答えになり申し訳ありませんが、これには下記のような理由があります。
▶︎日常管理の質は店舗によって異なるため。
▶︎お店によって仕入れ先が異なるため。
▶︎どんなお店と比較するかで良し悪しが異なるため。
というのが筆者の見解です。
丈夫な苗を扱っているホームセンターの特徴
前項の通り「良い苗か悪い苗か」というのは一概に答えが出せませんので、ここでは筆者の経験をもとに、「丈夫な苗を扱っているホームセンター」の3つの大きな特徴をお教えしたいと思います。
園芸専門スタッフがいる
ハーブや草花のことをよく理解しているスタッフがいる店舗は、やはり苗の質が高い傾向があります。
特に、ハーブ苗の管理は「水分コントロール」が非常に重要です。
マニュアル通りに毎日水やりを行っていると、土の中で根腐れが進行している場合があり、購入して植え付ける頃には既に弱っている場合があります。
つまり、ハーブ苗にはハーブ苗に適した水の与え方が必要であり、その知識と経験を備えたスタッフの存在は、適切な日常管理がされていること、そして商品価値をしっかり保持している証明になります。
また、困った時にプロのアドバイスがもらえるのも嬉しいポイントです。
問題は「専門スタッフがいるかどうかを、何で判断するのか」ですが、正直なところ、実際に話しかけてみないとわからないというのが本音です。
ホームセンターの従業員さんは園芸エリアだけでなく、他の売場も兼任しているパターンがあるため、必ずしも植物の専門家が園芸コーナーに常時張り付いているわけではありません。
そんな時は「ハーブ苗ことでお聞きしたいのですが、、、」という常套句を使います。
自信をもってすぐに答えてくれたり、本人が分からなくても相談に乗ってくれる方を呼んでくれるお店はスタッフさんの知識や経験レベルを測る上で良いバロメーターになります。
つまり、専門知識のある方が苗の日常管理に従事している(=苗が健康な状態に保たれている)場合が多いというわけです。
苗売り場の環境が良い
次は、苗の管理をしている場所、つまり店舗の物理的な環境や設備です。
ホームセンターの苗売り場は、観葉植物などを除いてほとんどが屋外にあります。
他の商品と異なり、植物には光合成が必要ですので当然のことですが、この屋外の売り場の環境と苗の状態を観察するのも一つの判断材料になります。
良い苗があるホームセンターに共通するのは下記のような管理環境です。
・苗売り場の風通しが良い。
・雨に晒されないような場所にある
(もしくは雨を避けられるように工夫されている。)
・強い西日が当たらない
(もしくは西日が当たらないように工夫されている。)
風通しの良さは植物の生育にとって非常に大切です。
水やりをしっかりと行っていても、風通しがなければ株元が蒸れて根腐れや害虫の発生、病気の原因になります。
また、雨ざらしによる苗の水分過多にも注意が必要です。
雨の日に苗がそのまま放置されていたり、雨を遮る仕組みがない店舗の苗は、大抵雨上がりの苗の状態が芳しくありません。
また、西日が当たりすぎる場所に苗売り場がある場合も注意が必要です。
苗に強い西日があたることで葉焼けを引き起こします。
このように、施設の造りや苗売り場の方角によって、知らず知らずのうちに植物にとって悪い環境ができている場合もあるので、物理的な環境も見分けるポイントです。
寒い地域から苗を仕入れている
皆さんが寒い地域にお住まいであれば特に、寒冷地から苗を仕入れているお店を推奨します。
その理由は、日本で多年性のハーブを栽培するときにはほとんどの地域で耐寒性が必要になるからです。
筆者が勤めていた園芸店は信州地方にありました。
苗物は、種子から育てたり株分けしたり挿木をして栽培し、春先になってようやく店頭に並びはじめます。
傾向として、寒い信州で育った宿根草の苗は越冬に強く、植え付け初年であっても無事に冬越しする傾向があります。
寒さに弱い苗と強い苗の違いは、この「育った環境」です。
色々なホームセンターを回って、従業員さんに聞いてみたところ、一番多かったのは暖地で栽培された苗を仕入れているケース。
暖地
=年間の平均気温が15〜18℃の地域
もし皆さんのお住まいが暖地であれば特に大きな問題ではありません。
しかし、育てる場所が寒冷地だとしたら、暖かい地方で育った苗が冬の寒さに耐えられないことがあります。
一年草に関してはあまり差はありませんが、多年性のハーブに関しては冬越しを想定して寒い地方で育った苗を購入したいものです。
もちろん、仕入れ先はお店によって違いますので、行きつけのホームセンターの苗がどんなところで育ったものなのか、是非従業員さんに聞いてみてください。
「仕入れ先を教えてください」というと失礼になりますので、「苗はどこで作られたものですか?」「苗は県内で育ったものですか?」という質問であれば答えてくれる場合が多いです。
寒冷地でなくとも、育てられた地域が皆さんの居住地に近いエリアであれば、環境適合もしやすく安心度が高い苗と言えます。
種類豊富で丈夫な苗が揃う「おぎはら植物園」の苗はこちら
苗の状態は必ず確認しよう!
どんなに良い環境や条件が揃っているお店であっても、色々な事情により、時には日常管理が行き届かない場合もあります。
従って、最終的には私たちが良い苗を見分ける「目利き力」を身につけ、どんなお店の苗でも良し悪しを判断できるようになるのがベストです。
どんなに良さそうなお店であっても、購入前にはしっかりと苗の状態を確認するよう心がけましょう。
下記のページでは、健康な苗を選ぶコツを解説しておりますので、ご興味ある方はあわせてご覧ください。
最後に
今回は、普段からたくさんの方にご質問いただく「ホームセンターの苗の質」について、筆者の経験も踏まえ解説させていただきました。
最終的には、苗そのものの良し悪しというよりもお店の質に言及した記事になってしまいましたが、ホームセンターだけでなく園芸店にも当てはまる内容となっていますので、これからハーブ苗を購入する時は参考にしてみてください。
他にも、園芸道具を取り扱う園芸店や100円ショップ、ネット通販など、それぞれのお店にどんな特徴があるのか解説している記事をご用意しましたので、あわせて参考にしてください。