はじめに
以前、私が働いていたハーブ苗専門の園芸店では、「ホームセンターで買った苗がすぐに弱ってしまい、植えたら枯れてしまった」という相談をよく受けました。

苗の品質が原因なのか、あるいは植え付け後の管理に問題があったのか、詳しく状況を聞かないと判断は難しいことも多いですが、こうした相談が頻繁に寄せられたのは事実です。このことから、多くの方がホームセンターの苗の質について不安を抱いていると感じました。そこで、私の経験も交えて、このテーマについて掘り下げてみようと思います。
私自身、普段から大型ホームセンターをよく利用しており、豊富な品揃えや利便性など、専門の園芸店にはない魅力がたくさんあることも知っています。しかし、ハーブ苗に関しては、さまざまなお店を見てきた中で「品質面で注意すべき点がある」と感じる場面も少なくありませんでした。
そこで今回は、「ホームセンターで扱うハーブ苗は本当に大丈夫なのか?」をテーマに、苗の選び方や注意すべきポイントについて解説していきます。
過去にホームセンターで苗を購入したことがある方、またはこれから購入を検討している方にとって、本記事が参考になれば幸いです。

ホームセンターのハーブ苗の品質とは?
結論からお伝えすると、ホームセンターのハーブ苗が「良い」か「悪い」かを一概に決めることはできません。
この曖昧な答えには、いくつかの理由があります。以下のポイントを押さえておくと、苗の品質を見極める際の参考になるはずです。
日常管理の質が店舗によって異なる
ホームセンターでは、スタッフの知識や管理体制が店舗ごとに異なります。こまめに水やりや病害虫のチェックをしている店舗もあれば、管理が行き届かないまま放置されている店舗もあります。そのため、同じチェーン店であっても苗の状態には差が生まれることがあるのです。
ポイント: 店舗を訪れた際は、苗が新鮮で健康的に見えるかどうか、また葉に病気や害虫の痕跡がないかをしっかり確認しましょう。
仕入れ先が異なるため品質にばらつきがある
ホームセンターが取り扱うハーブ苗の仕入れ先は、地域や店舗によって異なります。専門の農家から直接仕入れている場合もあれば、大量生産された苗が流通していることも。
仕入れ先が異なると、苗の育成環境や栽培過程に違いが生じるため、購入する場所によって品質にばらつきが出るのです。
ポイント: できるだけ信頼できる仕入れ元から提供されている苗かどうかを見極めるには、店舗のスタッフに質問してみるのも良いでしょう。
比較対象によって「良い」「悪い」は変わる
ホームセンターの苗を「良い」と感じるか「悪い」と感じるかは、比較対象次第です。例えば、専門の園芸店や直売所と比較すると、苗の状態が劣ると感じるかもしれません。一方で、価格や入手のしやすさを重視する場合は、ホームセンターの苗に魅力を感じるでしょう。
ポイント: 苗の質だけでなく、価格やアクセスのしやすさなど、自分にとって重視する要素を基準に判断することが大切です。

丈夫なハーブ苗を扱っているホームセンターの3つの特徴
前項でお伝えしたように、ホームセンターのハーブ苗の「良し悪し」は一概に言えませんが、筆者の経験から見て、丈夫な苗を扱っている店舗にはいくつかの共通した特徴があります。ここでは、特に注目すべき3つのポイントを紹介します。
専門知識を持ったスタッフがいる店舗

丈夫なハーブ苗が育つかどうかは、日常の管理次第。そのため、植物の知識が豊富で適切なアドバイスをしてくれるスタッフがいる店舗を選ぶと安心です。適切な水やり、土の管理、肥料の使い方について質問した際にしっかり答えてくれるかどうかがポイントです。
<チェックポイント>
・スタッフが水やりや土の管理などの知識を持っているか
・質問に対して具体的かつ的確な回答が返ってくるか
<プロのアドバイスを活用しよう>
「ハーブ苗のことでお聞きしたいのですが…」と気軽に話しかけてみましょう。質問に自信をもって答えるスタッフがいる店舗は、管理レベルも高い可能性があり、健康な苗を扱っていることが多いです。
病気や害虫の早期発見、適切な水やりが徹底されていることが多く、結果として、店頭に並ぶ苗の品質が良く、購入後も育てやすい苗が手に入りやすいのです。
まずはスタッフとのコミュニケーションを試して、店舗の信頼度を測ることが、丈夫なハーブ苗を見つける近道と言えるでしょう。

管理環境が整った苗売り場

苗の質には、売り場の物理的な環境が大きく影響します。植物にとって適切な光や風通しが確保されていることが、苗の健全な育成に必要です。
<チェックポイント>
・苗売り場の風通しが良い
・雨ざらしにならないように屋根やカバーがある
・強い西日が直接当たらないよう配慮されている
<物理環境が整っているかを見極めよう>
風通しが悪いと苗が蒸れて病気や害虫の発生原因になります。また、雨ざらしだと水分過多で根腐れのリスクが高まり、強い西日は葉焼けの原因になるため、売り場環境をチェックするのが重要です。
苗が置かれている施設の構造や売り場の方角によっては、知らないうちに植物にとって悪い環境ができてしまうことがあります。風通し、雨よけの有無、日当たりなど、物理的な環境が適切に整っている店舗で購入することが、丈夫なハーブ苗を手に入れるポイントです。

寒冷地から仕入れた丈夫な苗が揃っている

苗が育った環境は、その後の耐寒性や成長に大きな影響を与えます。特に多年性ハーブを育てる場合は、寒冷地で育てられた苗の方が冬越ししやすく、丈夫な傾向があります。
<チェックポイント>
・寒冷地や自分の居住地域に近いエリアで育てられた苗かどうか
・スタッフに仕入れ元や育成環境について質問してみる
<仕入れ先を見極める質問の仕方>
「この苗はどこで育てられたものですか?」といった質問なら、スタッフも答えやすいです。寒冷地で育った苗は特に冬の寒さに強く、丈夫な苗を選ぶ際の大きなポイントになります。また、お住まいの地域に近い場所で育成された苗は、その地域の環境に適応しやすく、育てる際のリスクが少なくなります。
苗が寒さに耐えられるかどうかは、どこで育ったかが大きく影響します。様々なホームセンターを調査したところ、多くの店舗で暖地(年間の平均気温が15〜18℃の地域)で育てられた苗が仕入れられていることがわかりました。

暖地の苗であれば、暖かい地域では問題なく育てられますが、寒冷地で育てる場合には注意が必要です。暖地で育った苗は、冬の寒さに弱く、寒冷地では越冬が難しいことがあります。
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苗の状態は必ず確認しよう!

どんなに環境や条件が整ったお店であっても、何らかの事情で日常管理が十分に行き届かない場合があります。そのため、最終的には私たち自身が苗の良し悪しを見極める「目利き力」を身につけることが重要です。これにより、どのお店で購入する場合でも、失敗しない苗選びが可能になります。
健康な苗の選び方については、下記のページで詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

最後に
今回は、多くの方からご質問をいただく「ホームセンターの苗の質」について、筆者の経験も交えながら解説しました。
結果として、苗そのものの良し悪しというよりも、どのお店で購入するかが重要であることに焦点を当てた内容となりましたが、この情報はホームセンターだけでなく、園芸店にも当てはまります。これからハーブ苗を購入される際には、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
また、園芸専門店や、100円ショップ、ネット通販のメリット・デメリットについても解説した記事をご用意していますので、そちらもあわせてご覧ください。
