はじめに
料理の香り付けや庭木として親しまれている「月桂樹(ローリエ)」。その美しい緑色の葉と独特の芳香は、シチューやカレー、ポトフといった煮込み料理の隠し味として大活躍するだけでなく、古代ギリシャ・ローマ時代から「勝利の象徴」としても知られており、月桂冠を頭に載せた英雄や詩人のイメージは歴史や文学を彩る象徴の一つでもあります。
また、月桂樹はただ料理のスパイスとして使われるだけでなく、その生命力あふれる常緑の姿は庭や鉢植えの観賞用としても人気です。さらに、香り成分にはリラックス効果や防虫効果もあることから、日々の暮らしの中でさまざまな場面に活用されています。
この記事では、そんな月桂樹について、その特徴や活用方法から育て方のポイントまで、詳しくご紹介します。香りや歴史を楽しむだけでなく、ご自身で育てる喜びも味わえる月桂樹の魅力に、ぜひ触れてみてください。

月桂樹とはどんな植物?
基本情報

月桂樹
学名 | Laurus nobilis |
別名 | ローリエ、ベイリーフ |
原産 | 地中海沿岸 |
科名 | クスノキ科ゲッケイジュ属 |
分類 | 常緑高木 |
大きさ | 4m〜10m以上 ※生育環境によって異なる |
開花時期 | 4〜5月頃 |
耐性 | 耐寒性:やや弱い 耐暑性:強い |
活用法 | 料理、観賞用 |

月桂樹の特徴
月桂樹はその歴史と文化的な象徴性で知られています。古代ギリシャ・ローマ時代には、勝利や栄光の象徴として月桂樹の冠が英雄や詩人に贈られました。この伝統は現代にも引き継がれており、卒業式や式典で月桂樹の葉を模した冠が用いられることがあります。
葉は、光沢のある深い緑色をしており、その美しい見た目に加えて、独特の芳醇な香りを放つのが特徴です。この香りは、月桂油、シネオール、オイゲノールといった成分によるもので、古くから料理の風味付けだけでなく、薬用としても幅広く利用されてきました。例えば、シネオールには抗炎症作用やリラックス効果があるとされ、伝統的な民間療法にも取り入れられています。
月桂樹の効果や効能については「わかさ生活」のサイトで詳しくご覧いただくことができます。

月桂樹は雌雄異株の植物で、オスの木とメスの木がそれぞれ異なる役割を持っています。春になると、オス株とメス株の両方で淡い黄色の小さな花を咲かせます。
月桂樹の活用方法
月桂樹の葉(ローリエ)は、その豊かな香りと風味を活かして、料理から日常生活まで幅広く活用されています。乾燥させた葉を用いるのが一般的で、調理時の香り付けや保存、さらには生活のさまざまなシーンで役立ちます。以下にその具体的な活用方法をご紹介します。
料理での活用

風味付け
ローリエは、カレー、シチュー、スープ、ポトフなど、煮込み料理に欠かせないスパイスです。独特の香りが料理の深みを引き立てるだけでなく、肉や魚の臭みを抑える効果もあります。

ハーブオイル
ローリエの葉をオリーブオイルに漬け込むと、香り豊かなハーブオイルが作れます。サラダやパンに添えると料理が一層美味しくなります。
ハーブソルト
乾燥させたローリエの葉を粉末状にし、塩と混ぜることで、自家製のハーブソルトが完成します。肉料理やグリル野菜にぴったりです。
家庭でも簡単にできるハーブソルトの作り方は下記の記事をご覧ください。
ピクルス
ピクルス液にローリエを加えると、爽やかな香りがプラスされ、風味がぐっと引き立ちます。

ハーブバス

乾燥した葉をお風呂に入れると、心地よい香りが広がり、リラックス効果が期待できます。疲れた体と心を癒しながら、至福のひとときを楽しむことができます。
ローリエをお風呂で活用する方法は以下の通りです。
- ローリエの束をそのまま浴槽に浮かべる
最も手軽でシンプルな方法です。新鮮なローリエの葉を数枚束ねて、そのまま浴槽に浮かべるだけで香りを楽しめます。 - ローリエを布袋に入れて浴槽に浮かべる
ローリエの葉を布袋に入れ、浴槽に浮かべる方法です。葉が直接肌に触れるのを避けたい方におすすめで、香りを損なわず快適に利用できます。
虫除け
ローリエの葉には天然の虫よけ効果があるとされています。特に、ローリエに含まれる芳香成分が、害虫が嫌がる香りを放つため、キッチンや収納スペースで活用するのに最適です。
例えば、乾燥させたローリエの葉を数枚、小さな布袋や通気性の良い容器に入れ、食材を保存する棚やクローゼットに置くと、ゴキブリやダニ、その他の害虫の侵入を防ぐのに役立ちます。化学的な防虫剤を避けたい方にも、ローリエは安心して使える自然素材として人気があります。
クラフト

リース作りでは、ローリエの美しい深緑の葉と独特の香りを活かし、インテリアとしても楽しめる素敵な作品が完成します。リースにローリエを使うと、香りが広がり、お部屋全体をリフレッシュしてくれる効果も期待できます。
また、クリスマスや季節のイベント用の装飾としてもぴったりで、リボンや松ぼっくり、ドライフラワーなどを組み合わせることで、より個性的なデザインを楽しめます。

月桂樹の育て方
非常に丈夫であることから庭木として高い人気を誇ります。乾燥に強く、剪定にもよく耐えるため、手入れが比較的簡単で、初心者でも育てやすい樹木です。
種子から育てるか苗から育てるか
月桂樹は種子から育てることも可能ですが、発芽率が低いため、一般的には苗木から育てるのがおすすめです。苗木は園芸店などで入手できます。
植え付けは春(4月中旬~下旬)や秋(9月頃)が適しています。日当たりの良い場所を選びますが、明るい日陰でも育ちます。ただし、寒風や乾燥した風を避けるようにしましょう。
植え付けの手順
土の準備

水はけの良い肥沃な土壌を好みます。地植えの場合、植える場所の周辺の土を掘り返し、小石やごみを取り除き、堆肥や腐葉土を混ぜて土壌を改良しましょう。鉢植えの場合は、小粒の赤玉土6に対し腐葉土4の割合で混ぜた土がおすすめです。
植え付けの手順
- 根鉢のサイズの倍程度の幅と深さの穴を掘ります。(苗の大きさによって深さは調整して下さい)
- 元肥として腐葉土や堆肥を土に混ぜ込みます。
- 苗を穴に置き、土を戻しながら軽く押さえて固定します。
- 植え付け後、たっぷりと水を与えます。
日常管理
水やり
根付いてからは特に水やりの必要はありません。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
ハーブの水やりの注意点は下記のページもご参照ください。
肥料
1~2月に寒肥として有機質肥料を株元の周辺に埋めます。鉢植えの場合は、3月に緩効性の固形肥料を株元に与えます。
肥料ついてもっと詳しく知りたい方は、下記のページをご参照ください。

剪定(重要!)

月桂樹は生育旺盛なため、年に1~2回の剪定が必要です。生育が活発な春(3月~4月)と秋(9月~10月)が剪定の適期です。
剪定の目的は、不要な枝を間引き、風通しと日当たりを良くすることです。また、6月頃に新芽を切ることで、樹高が高くなりすぎるのを防げます。
<剪定する場所>
- 長く伸びすぎた枝
- 交差している枝
- 内側に向いている枝
- 枯れた枝
【剪定の注意点】
剪定しすぎない: 一度に多くの枝を切ると、植物に大きな負担がかかります。
切り口を清潔にする: 剪定工具は、毎回消毒して清潔な状態を保ちましょう。
雨の日は避ける: 雨の日は、切り口から病気が入り込む可能性が高いため、避けるようにしましょう。

病害虫対策
月桂樹は比較的病害虫に強いですが、カイガラムシがつくことがあります。定期的に葉の様子をチェックし、見つけ次第取り除きましょう。また、枝が混み合うと風通しが悪くなり、病害虫の発生リスクが高まるため、適切な剪定を心掛けてください。
収穫後の保存方法

- 洗浄: 収穫した葉は、流水で丁寧に汚れを洗い落とし、水気を切ります。
- 乾燥
- 自然乾燥: 風通しの良い日陰で、葉を広げて乾燥させます。直射日光は葉の色を悪くし、香りを飛ばしてしまうので避けましょう。
- 電子レンジ: キッチンペーパーで包み、数分ずつ加熱を繰り返すことで乾燥させる方法もあります。
- フードドライヤー: 食品乾燥機を使うと、効率的に乾燥させることができます。
- 保存: 完全に乾燥させた葉は、密閉容器に入れて冷暗所で保存します。シリカゲルなどの乾燥剤と一緒に保存すると、より長持ちします。
<保存期間>
乾燥状態を保てば、1年以上保存可能です。ただし、時間の経過とともに香りが薄れていくので、早めに使い切ることをおすすめします。
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最後に
月桂樹は、美しい見た目と芳醇な香りに加え、料理やクラフト、虫よけなど、多彩な活用法を持つ魅力的な植物です。さらに、乾燥や剪定に強い丈夫な樹木で、庭木としてもおすすめです。四季折々の変化を楽しむことができるだけでなく、庭全体に香りを広げるアクセントとしてもぴったりです。
ぜひこの記事で紹介した活用法を参考に、月桂樹を日常生活やお庭に取り入れてみてください。月桂樹のある暮らしが、癒しや豊かさをもたらしてくれることでしょう。
