ローズマリーが枯れる原因と対策:育て方のコツ、剪定方法、品種選び

はじめに

ローズマリーは、お庭のアクセントからお料理、ハーブティーまで幅広く活躍し、多くの人々に愛される人気のハーブです。しかし、「元気に育てていたはずなのに枯れてしまった…」という悩みを抱えている方も少なくありません。

私がハーブ苗専門店で働いていた頃、お客様から最も多かったご相談の一つが「ローズマリーのお手入れ方法」。特に、枯れてしまった原因についての質問が後を絶ちませんでした。

中でも多いのが「枯れてしまったのですが、何がいけなかったのでしょうか…」というご相談。

そこで今回は、ローズマリーが元気に育つためのコツや特性について詳しく解説します。「どうして枯れてしまうの?」「日常のお手入れで気をつけるべきポイントは?」そんな疑問にお答えしながら、大切なローズマリーを長く楽しむためのヒントをお届けします!


ローズマリーの特性

ローズマリーに限らず、植物を育てる上で特性を理解することは非常に大切です。

なぜなら、全ての植物は生まれ育った土地の気候風土の影響を受けているからです。

まずはローズマリー自体がどのような植物なのか、知っている方もおさらいを兼ねて見ていきましょう。

ローズマリー

学名Salvia rosmarinus
原産地中海沿岸地域
科名シソ科マンネロウ属
分類多年草(常緑低木)
大きさ30〜200cm
※品種や環境によって異なる。
花期11〜5月
※品種によって異なる。
耐性耐寒性:あり
耐暑性:あり 

※品種によって多少異なる。
活用法料理、精油、ハーブティー、
入浴剤、虫除け、 etc

2017年にローズマリーの学名が『Rosmarinus officinalis』から『Salvia rosmarinus』へと変更になりました。


”分類学の父”と呼ばれたスウェーデン人の「カール・フォン・リンネ」によって1753年に命名されたものが、260年もの年月を経て変更されたことで大変話題になりました。



枯れてしまう理由

ローズマリーが枯れてしまう例の多くは、主に下記の原因によるものです。

①生育環境が悪い。(水はけ、風通し、日当たりが悪い)
②剪定をしていない。
③寒さに弱い品種を育てている。

もし一つでも心当たりがあれば、これから説明する生育環境と丈夫に育てるためのポイントを参考にしてください。


適切な生育環境

ローズマリーの原産は地中海沿岸です。地中海性気候は、夏は雨が少なく乾燥しており、冬は温暖で他のシーズンよりも雨が多くなるという特徴をもっています。

前述の通り、植物は生まれ育った土地の気候風土の影響を受けますので、ローズマリーを上手に育てるためには、原産地である地中海沿岸の気候を理解し、なるべくその環境に合わせるような育て方をしなければならないということになります。

他の多くのハーブ同様、ローズマリーも日当たりがよく、水はけも風通しも良い乾燥した環境を好みます。

一方、日本の気候は温暖湿潤気候ですから、夏は暑く冬は寒い、四季を通じての温度差が激しく、しかも年間雨量が多いため湿度が高いという環境です。

つまり、「乾燥していて寒暖差の少ない環境」で生まれたローズマリーにとって、日本の「湿度が高く寒暖差の大きい環境」は、伸び伸び育つにはちょっと厳しい条件ということがわかります。

日本の年間雨量は地中海沿岸のそれと比べると約3倍。しかも温度が上がる春夏の雨量が多いということで、私達がいかに湿気の高い環境で生活しているかがわかります。



丈夫に育てるためのポイント

前項で、ローズマリーの栽培には日本の気候は合わないとお伝えしましたが、それでも、以下の3つのポイントをしっかりとおさえておけば、日本の気候環境下でもしっかり丈夫に育てることができますのでご安心ください。

❶ 最適な植え付け場所を見極める
❷ 効果的な剪定を行う
❸ 耐寒性の強い品種を選ぶ


最適な植え付け場所を見極める

まずは基本中の基本である植え付け場所です。
(鉢で育てている方は鉢の置き場所と考えてください。)

ローズマリーの生育適温は15℃〜25℃ですので、日中にこの温度を保てる場所が必要となります。つまり、太陽光で温度が上がる場所(=日当たりの良い場所)ということになります。

半日陰でも育ちますが、生育温度の確保、そして植物にとって大切な光合成の量を考えるとやはりしっかりと日が当たる場所がベストです。

また、水はけと風通しが良いということも重要なポイントです。

前述の通り、ローズマリーは湿気による蒸れに弱いため、ジメジメした環境下に長く放置すると徐々に弱っていきます。

水はけと風通しの良い場所を選ぶことで、株元に溜まった水分が蒸発して、ローズマリーの好きな「乾燥気味の環境」を作ってくれます。

中々水気の抜けない粘土質の土地は栽培に不向きです。どうしても粘土質気味の土地しかないという場合は、植え付け場所を高畝にして水はけを良くするか、鉢・プランターでの栽培に切り替えましょう。



効果的な剪定を行う

ローズマリーにとって、一番大切なお手入れは水分コントロールと剪定です。

植え付けの時に整った生育環境を与えたとしても、特に梅雨のような時期は、どうしても株元の水分が抜けにくくなります。

水やりに十分注意を払っていても気温が上がってくる頃にはどうしても蒸れる環境ができてしまうのは仕方ありませんが、そんな時に「やっておいて良かった〜」と思わせてくれる日常管理が「剪定」です。

ローズマリーに限らず、多くの植物にとって「剪定」は形を整え、花付きを良くするためだけではなく、風通しを良くして株元に湿気を溜め込まないようにするためにも重要な作業です。

人間の髪の毛も、毛量が増えてくると表皮が蒸れて汚れが溜まったり、髪自体にダメージを与えてしまう原因になるように、植物にも同じことが言えます。

剪定して風通しをよくすることで蒸れによる生育不良を回避しましょう。

効果的な剪定方法

剪定には、切る箇所ややり方などによって、「枝抜き」「刈り込み」「切り戻し」「摘心」など幾つかの種類があります。

ローズマリーに有効な剪定方法は「切り戻し」と「摘心」です。


▶︎切り戻し=伸びた枝を短く切る作業のこと。

ローズマリーは成長していくとに、自然と枝葉が混みあってきます。

そして、そのまま何もしないでおけば、姿形は崩れ始め、株自体の風通しが悪くなって病気が発生しやすくなります。

不要な枝を切り戻してあげることで病気を防ぎつつ、姿形を美しいままに保つことができます。



▶︎摘心=先端の芽を切る作業のことです。

多くの植物には「頂芽優勢」という性質があります。

簡単に言うと、茎の先端の芽のほうが脇から出てくる芽より優先して成長するという現象です。

つまり、摘心で先端の芽を切ってあげないと、脇から出てきた芽は成長が抑制され伸びにくくなってしまうのです。逆に、摘芯をしっかりしてあげることで健康的に枝が増えていくことになります。



剪定の時期】
基本的には、春5月・秋9月と言われていますが、暑さに弱いので9月でも残暑が厳しい場合はもう少し先延ばしにしてあげてください。また、お住まいの地域や気候環境によって適期が異なりますので、状況を考慮しながら調整しましょう。

剪定に関する書籍はこちらから

耐寒性の強い品種を選ぶ

地中海原産ということもあり、寒さに弱いイメージのあるローズマリーですが、実は寒さには強く日本でも問題なく越冬できます。

耐寒性のある品種の中でも強耐寒性品種を選ぶことで更に枯れてしまうリスクを軽減することができます。

一般的にローズマリーの耐寒温度は−5℃程度ですが、強耐寒性の品種は−10℃から場合によっては−20℃くらいまで耐えることができます。

特に寒冷地で育てる場合は、この強耐寒性を選ぶようにしましょう。

オススメの強耐寒性品種は、「アープ」「マリンブルー」「ミスジェサップ」です。


<参考商品>



ただし、強耐寒性の品種を選んだからといって100%安心とは言えません。

いくら耐寒性が強いとはいえ、霜柱ができて根っこにダメージがあると枯れてしまう場合もありますので注意が必要です。

水やりの際は必要最小限にとどめ、過剰な水分が霜柱にならないようにしましょう。

植物自体の越冬前の状態が健康であればあるほど無事に越冬する確率が上がります。

そのため、(前述の通り)シーズン中の剪定をしっかりしておき、秋の時点で健康な状態を確保しておきましょう。

ローズマリーの苗をチェックしてみよう (リンク先:楽天市場)

最後に

ローズマリーであろうと何であろうと、せっかく大切に育ててきた植物が突然枯れてしまうのは非常に残念なことです。

もちろん、気候や環境の変化というものが常に作用するので、一口に「対策」と言っても、どこまで何をやれば良いのかというのは専門の苗屋さんであっても難しいところはあります。

一番大切なのは可能な限り日常の手入れをしっかり行いつつ、植物自体を日々観察してあげるということだと思います。

日々観察することによって、その植物に適した生育環境と苦手な環境が見えてきます。

これまでローズマリーの栽培が上手くできなかった、または毎年なぜか枯れてしまう…という方は、今回ご紹介したポイントを念頭に再度チャレンジしてみてください。

万が一、土質に問題がある場合には別途対策が必要です。

下記のページにて土質の問題に触れていますので、よろしければあわせて参考になさってください。


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ハーブについて栽培のコツ
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