はじめに
前回の記事では、まき床の準備、播き方、発芽までの日常管理について解説させていただきました。
本記事では、発芽した後の育苗と定植のプロセスについて解説させていただきます。
必要な資材を準備できていない方、種まきがまだ終わっていない方は下記のページをご覧ください。
発芽後の管理(育苗)
発芽まで新聞紙を被せていた場合は、発芽後に直ぐ取り外しましょう。
嫌光性種子であっても、光を苦手とするのは発芽するまでの間ですので、発芽後はしっかりと光をあてて光合成を促します。
育苗箱や鉢は、日当たりがよく風通しの良い場所で管理します。
水やりは発芽までと同様に、土を乾燥させないように適宜行っていきます。
間引き
生長するに従って混み合った芽を抜き取る作業が「間引き」です。
間引きには、以下のような目的があります。
・生育が良い芽を選抜して育てるため。
・土の養分を一定数の芽に集中させるため。
・風通しをよくするため。
間引きをすることで、病気のリスクを回避しながら丈夫な株だけを残していくことができます。
【どんな芽を間引くの?】
▶︎茎が細くてひょっとしている。
▶︎発育が他と比べて遅い。
▶︎変色または変形している。
【いつ間引くの?】
(1回目)葉が触れあうくらいの大きさになった頃、生長の良さそうな方を残して2〜3cm程度の間隔を空けるくらいに間引きます。
(2回目以降)本葉が2〜3枚になった頃に、再び葉が触れ合わないくらいの間隔になるよう間引き、以降も本葉が増えていくにしたがって同じように間引いていきます。
【いつまで間引くの?】
葉が触れ合わない程度まで間隔が開き、根がしっかりと張っている状態を確認できたら間引きはストップして構いません。通常は2〜3回程度で間引きの作業は終わります。
・指やピンセットで抜いても構いませんが、ハサミを利用して株元を切れば根を痛めずに済みます。
・最終的に株と株の間が等間隔になるように間引きます。
バジルやルッコラなどの間引いた若葉はえぐ味も少なく、サラダに散らすなどして美味しくいただくことができます!
ポット上げ(移植)
根が張り始め、本葉が3〜4枚の健康な株に成長してきたら、次はポットへの移植作業に移ります。
ポット上げとは、まき床で育てた小さな苗をポットに移植することで、以下の目的で行います。
▶︎まき床よりも養分が豊富な土に植え替え、更に生長を促進するため。
▶︎定植に耐え得る大きく丈夫な苗に育てるため。
大きめのプランターに直接播いている場合や、ポットに点まきして育てている場合、またはルッコラのように収穫も兼ねて間引きながら育てるような一年草のハーブには必要のない作業です。
<必要な道具>
・育苗ポット
・培養土
・ピンセット(フォークでもよし)
・ハンドスコップ
・ジョウロ
<ポット上げの手順>
①育苗ポットに容量半分〜8分目程度の培養土を入れます。
②水をかけて予めポットの土を湿らせておきます。
③ポットの土に穴を掘り、苗を入れるスペースを作ります。
④ピンセットやフォークを使って、まき床から苗を掘り上げ、③で掘った穴に差し込みます。
⑤株元またはに土を被せて、軽く手で抑えて完了です。
(土は、最終的にポットの9分目位まで埋まるように入れます。)
【ポット上げした後は?】
・苗は日当たりの良い場所で、隣のポットと葉が重ならないようにして管理します。
(葉が重なると日陰ができて生育不良になったり、虫が繁殖する原因にもなります。)
・水やりは、これまで同様に乾いたらたっぷりとあげます。
定植
ポット上げからしばらく経ち、本葉が5〜6枚になったら定植準備OKです。
長期間ポット苗の状態のままにしておくと、根詰まりして生長不良に陥りますので、ある程度の大きさになったら植え付け場所に移植します。
複数の苗を植える場合は、生長後の株の大きさを想定して株の間隔をあけましょう。
鉢・プランターに植え付ける方法は下記のページにてご覧いただけます。
(リンクをクリックしていただくと、該当の説明箇所にスクロールします。)
鉢・プランターのサイズ選びについて詳しく知りたい方は、下記のページで詳しく解説していますのであわせてご参照ください。
種まき、育苗、定植が終わったら
種まきから始まった皆さんの育苗も、定植をした時点で一通り終了となります。
ここからは日常管理(水やり、剪定、施肥など)をしながら収穫まで育てていくことになりますので、日々観察をしながら健康な状態をキープしていってください。
定植が終わったら、次のシーズンに向けてやっておきたい事があります。
それは「育苗箱やポットの洗浄」「種の保管」「土の保管」です。
育苗箱やポットの洗浄
使用済みの育苗箱やポットには、湿気で濡れた土がこびりついた状態になっています。
そのまま放置しておくと土がガチガチに固まり、次に使用する際に使いにくくなるので、土が乾かないうちに洗浄しておきましょう。
また、培養土には有機質の成分が含まれているので、高温になると雑菌が発生することもあります。
またすぐに使用するとしても、育苗に使った容器は一旦洗浄するようにしましょう。
種の保管
播ききれずに余った苗は、直射日光と高温多湿を避けて保管すれば、翌年も使用することができます。
なるべく密閉できる袋や蓋付きのガラス瓶などに入れて、冷蔵庫の野菜室など、涼しい場所で保管するようにしてください。
※翌年以降は発芽率が落ちます。持ち越しは一年程度にとどめ、それ以降は新しい種を購入しましょう。
土の保管
種と同じく、培養土についても保存状態が良ければ翌年も使用することができます。
開封済みの袋をしっかりと閉じて、直射日光や雨のあたらず、風通しの良い場所に保管しましょう。
✔︎湿りすぎてグチョグチョしていないか
✔︎乾きすぎてサラサラしていないか
✔︎カビが生えていないか
✔︎異臭がしないか
適度な湿り気がありつつ、カビも異臭もなければ再度使用することは可能です。
最後に
今回の記事では、発芽後に行う間引きやポット上げ、定植について解説いたしました。
種まきからはじまった育苗作業もここでひと段落ですが、収穫に至るまで剪定や施肥など色々な作業が待っています。
初めての方は色々と不安に感じたり、手間に感じることもあるかもしれませんが、ハーブの多くは野生化するほど丈夫で強い植物ですので、あまり神経質ならずに栽培を楽しんでいただければと思います。
栽培中の水やりのコツや虫対策などは下記のリンクからご覧いただけますで、あわせて参考にしていただければ幸いです。
『ハーブが枯れる原因は毎日の水やり!? 基本を理解してをリスク回避』
『肥料を理解する第一歩! 施肥の役割は? 堆肥とはどう違うの?』