はじめに
料理の材料として利用するコモンタイムをはじめとして世界中には300種以上のタイムがあります。
厚みのある細かい葉が特徴で、抗菌作用や鎮痛作用があるとして古代ヨーロッパやエジプトでは入浴剤や防腐剤として用いられました。
タイムは、直立して生長する「立性(りっせい)」や這うように横に生長していく「匍匐性(ほふくせい)」に分けられ、一般的に料理に使用されている品種は立性の「コモンタイム」です。
その他にも銀葉が美しい「シルバータイム」やレモンの香りと斑入りの葉が印象的な「ゴールデンレモンタイム」、日本に唯一分布する「イブキジャコウソウ」など、それぞれの個性を楽しめるのも魅力の一つです。
今回の記事では、そんなタイムの中でもグランドカバー(雑草抑え)として優秀な「クリーピングタイム」についてご紹介したいと思います。
クリーピングタイムについて
基本情報
クリーピングタイム
学名 | Thymus serpyllum |
別名 | ヨウシュイブキジャコウソウ |
原産 | ヨーロッパ、北アフリカ |
科名 | シソ科イブキジャコウソウ属 |
分類 | 多年草 |
大きさ | 10〜15cm程度(草丈) |
開花時期 | 4〜6月頃 |
耐性 | 耐寒性:あり 耐暑性:あり |
活用法 | 料理、お茶 観賞、グランドカバー etc |
学名に”地を這うように生長する”という意味の「serpyllum」という単語が使われている通り、クリーピングタイムは匍匐性(ほふく性)の品種です。
クリーピングタイムの亜種である「イブキジャコウソウ(伊吹麝香草)」と区別するために、「ヨウシュイブキジャコウソウ(洋種伊吹麝香草)」という別名がついていますが、姿が非常に似ているので混同しやすいかもしれません。
春に植え付けたものは4月頃から徐々に、分枝した茎の頭頂部から花序を出して、たくさんの花を咲かせます。
基本の花色は薄紫〜ピンクですが、中には白い品種も流通しています。
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活用方法
クリーピングタイムには、主に下記のような活用方法があります。
①グランドカバー
生長期には茎葉が旺盛に育ち、地面を覆うほどのボリュームになるため、雑草を抑えるグランドカバーとして非常に役立ちます。
花姿がとても可愛らしく観賞価値も高いため、玄関アプローチや庭の植栽のアクセントとしても優秀なハーブで、エントランス付近の雑草にお困りという方には必ずおすすめしています。
また、横に伸びて生長する性質を活かして、ハンギングバスケットのベースとしても楽しむことができます。
ハンギングにハーブを活用されたい方は下記の記事も是非参考になさってください。
② ハーブティー
一般的なコモンタイムと同じようにスッキリとした味わいが特徴で、胃もたれしている時やリフレッシュしたい時にハーブティーとして利用することができます。
タイム特有の香りがちょっと苦手な方は、レモンバームやレモングラス、ミント類とブレンドするのがおすすめです。
③ 料理
肉料理や魚料理の臭み消しにはもちろん、殺菌作用を活かしてハーブビネガーやピクルスの材料としても利用できます。
③ お風呂
非常に生育旺盛でどんどん収穫できますので、茎葉が茂って増えすぎてしまいそうな時には刈り取ってハーブバスとして利用しましょう。殺菌作用と香りが夏バテ防止になり、心も体もリフレッシュしてくれます。
使い方は下記の通りです。
①収穫 → 茎ごとバサミで刈り取ります。(量は好みで調整してください)
②束ねる → 輪ゴムや紐で束ねて縛ります。
③洗浄 → 土や埃、虫がついている場合もあるため、水で軽く洗浄します。
④浴槽に投入 → お湯を張る前から浴槽に入れておきます。
⑤浴槽にお湯を張って完成です。
クリーピングタイムを育ててみよう!
植え付け
生育環境としては、日当たりと風通し、水はけが良い場所を好みます。(乾燥気味な環境を好むため、高温多湿の状態が続くと黒ずんできますので注意が必要です。)
<種子から育てる>
▶︎発芽温度は20℃前後。
▶︎春まきは3〜5月頃、秋まきは9〜10月頃です。
▶︎まずは育苗ポットに播いて苗を育てます。
▶︎種子を播いたら、ごく薄く(2mm〜3mm程度)覆土します。
▶︎覆土が薄いため、育苗中は種が流れ出ないように霧吹きを使用すると便利です。
▶︎時期や環境にもよりますが、2〜3週間ほどで発芽します。
▶︎本葉が4〜5枚になった時点で地面に植え付けます。
<苗の植え付け>
苗から育て始める方、もしくは複数の株を植え付る場合は、株と株の間に20〜30cm程度の間隔をあけます。
鉢植えの場合、毎年生長して鉢が窮屈になると根詰まりすることもありますので、様子次第で1〜2年経ったら更に大きな鉢に植え替えるか、または株分けして植え直しましょう。
鉢植えがはじめての方は下記のページも参考になさってください。
土は市販の培養土を使用しても良いですし、ご自身でブレンドするのであれば小〜中粒の赤玉土と腐葉土を半々で配合するのがおすすめです。
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日常管理
◆水やり
地植えの場合は、根付いた後の水やりは必要ありません。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらしっかりと与えてください。
※冬の間は生長が遅くなりますので、土の表面が乾いてから1〜2日程度経過してから与えるくらいが丁度良いです。
◆剪定
株元の風通しが悪くなると枯れ始めますので、なるべくまめに切り戻しを行いましょう。
非常に丈夫な性質ですので、混み合った茎葉は積極的にすいても全く問題ありません。
剪定の基本について知りたい方は下記のページをご参照ください。
◆肥料
地植えの場合や培養土を使った場合はしばらく施肥の必要はありません。生育期間中に肥料分を多くあげてしまうと香りが薄れますので、基本的には肥料なしで育てます。
鉢植えの場合も春先に少し追肥してあげるだけで十分です。
今まで肥料を使ったことがないという方は、肥料の基本について下記のページも参考になさってください。
◆病害虫
虫の心配はいりませんが、高温多湿で蒸れた時にカビや根腐れが発生することがありますので、日常的な剪定(切り戻し)を行い予め対策しておきましょう。
最後に
今回は、横に伸びていく性質を活かしてグランドカバーに最適な「クリーピングタイム」についてご紹介しました。
機能的でありつつ、可愛らいしい花で見る人を楽しませてくれる素敵なハーブですので、本記事を参考に皆さんのご家庭でも育ててみてください。
同じタイムでもレモンの香りと斑入りの葉が美しい「ゴールデンレモンタイム」について、ご興味ある方は下記のページもあわせてご覧ください。