枯れるのは水やりが原因!? ハーブのとって適切な環境と水やりの注意点

はじめに

筆者が苗屋さんに勤めていた頃、毎年同じ時期に同じ苗を購入しに来る方を見かけました。

お話をしてみると、どうやら去年購入された苗をすぐに枯らしてしまったらしく、改めてチャレンジしてみたいとのこと。

観賞用のお花と比べると、ハーブは比較的強く育てやすいほうなのですが、なぜかうまくいかなくて悩んでいる方が多いと感じ、その後何人ものお客様に細かくヒヤリングするようになりました。

その結果、苗を購入した後すぐに枯らしてしまう方の多くに共通している一つの大きな原因が見えてきました。

それこそが今回の記事で取り上げる「水やり」です。

ガーデニングにおいて水やりは最も基本となる作業ですが、単純であるにも関わらず、実はさじ加減が非常に難しい作業の一つ。

基本中の基本でありながら、実はプロでも難しいと言われる作業の一つなのです。

これまでに何度チャレンジしても中々うまく植物を育てられなかった…という方でも、ハーブの生育に適した環境と水やりの基本を理解することで、枯らしてしまうリスクがぐんと減りますので、是非本記事を活かしていただければと思います。

この記事はこんな人にオススメ

・これから初めてハーブを栽培する方。
・苗を購入してもすぐに枯らしてしまう…という方。
・水やりの際にどの程度の量をあげたら良いのかいまひとつ加減がわからない…という方。



ハーブの生長に重要な要素

ハーブに限ったことではありませんが、植物を育てるためには「日当たり」「風通し」「温度」、そして「水やり」が必要です。

つまり、「どんな肥料をあげれば良いのか」「どんな鉢に植えるべきか」といったことの前に、まずは『どう生育環境を整えられるか』ということを最優先で考える必要があります。

うまく育てられなかった時についつい「養分」のせいにしがちですが、ハーブで大量に肥料を必要とするようなものは殆どありません。

 

基本的に必要な環境が整っているのかどうかをまずは診断することが大切です。


最適な環境とは?

多くのハーブは日当たりと風通しが良い乾燥気味の環境を好みます

逆に言えば「日が当たらない」「じめっとしている」」という環境では、温度も上がらず生長がしにくいのです。

たとえ生長しても徒長(※)してしまい、健康な状態とは呼べない哀れな姿になってしまいます。

※徒長
=日照不足や水分過多が主な原因で、健康な苗に比べ茎や枝が細くひょろっとしていて葉の色も薄い状態。


余談ですが、、
筆者の自宅の東側には雑木林の斜面があり、一日の半分は日陰という環境です。

それでも、実験的に色々なハーブを育ててみましたが、湿気や風通しの悪さによって虫が繁殖してしまい、何度も枯らしてしまいました。

日陰になることで、地温も中々上がらず、湿度も溜まりやすい、という悪要素を作り出していました。

生育旺盛であるはずのミントでさえ厳しい結果でした。。

全てのハーブが日当たりがよく風通しが良い環境を好むわけではありません。

中には、クレソンのように乾燥が苦手で湿り気が好きなものもあります。



故郷に近い環境

ハーブを元気に育てたい場合は、まずそのハーブがどこで生まれたのかを知ることが大切です。

植物の生長は、生まれ育った気候風土の影響を受ける傾向があります。

例えば、多くのハーブが地中海沿岸が原産とされていますので、それらが好む環境は必然的に「年間を通して湿気が少なく、平均的に温度が高め」ということになります。

従って、単純に考えれば、地中海沿岸原産のハーブには「乾燥気味で暖かい環境=風通しがよく日当たりも良い環境」が最適であるということが分かります。



適切な水分量

日本の気候は温暖湿潤気候です。

平均年間雨量は地中海沿岸地域と比べると約3倍、しかも日本は気温が上がる時期に最も雨量が多くなります。

私たち日本人は「非常に多湿な環境」で暮らしており、それはハーブの故郷の環境と真逆であるということを念頭にハーブを育てなければなりません。


そこで大事になってくるのが、今回の記事のテーマでもある「水やりのコツ」です。

植物が生長するために必要な要素「日当たり」「風通し」「温度」を、いくらしっかりと揃えてあげたとしても、誤った水のあげ方をしてしまうと上手に育てることができません。

特に湿気の多い日本において、地中海気候のような乾燥気味の環境に近づけるためには、日常の水分コントロールが重要な鍵となります。



日々の観察

まず何よりも大事なのは「毎日観察すること」です。

苗を購入すると、愛おしさから毎日のように水やりをする方がいますが、これは完全にNGです!

実はこの「毎日の水やり」こそが、植物を枯らしてしまう大きな原因になっているんです。


皆さんは「植物を育てるためには毎日水やりをしなくてはならない」というイメージを持っていませんか?

実はこうしたイメージを持っている方は非常に多く、この間違ったイメージの通りに毎日お水をあげている場合が非常に多いです。

毎日のルーティンとしての決まったように水やりを行うのではなく、まずはじっくり観察して苗の状態をしっかり観察し、必要に応じて水をあげるということを基本にしましょう。

実は、私自身も、植物に関わる仕事をするまでは「何があっても、植物にはとにかく毎日水をあげなきゃ」という間違った常識を持っていました。

そうです、、私も以前はどんな植物も枯らしてしまうマジックハンドの持ち主でした。。。


また、観察したときに植物の元気がない場合、「なぜ元気がないのか」ということを先に考えてあげることが大切です。

元気がない原因が、ひょっとしたら水不足ではなく日照不足かもしれませんし、風通しが悪く蒸れているということも考えられます。

もちろん、水不足であれば「水やり」は有効な解決策ですし、もしそうでなければ違った方法で元気にしてあげなければなりません。

つまり、ここでお伝えしたいのは、まずは一度しっかり観察して、水が不足している場合に水やりを行いましょう、ということです。

MEMO

葉っぱの様子は人間で言うと「顔色」のようなものです。葉っぱを観察することで、ある程度健康状態を推測することができます。

しんなりしている場合は「水切れ」、黄色くなったり色が薄くなってきた場合は「肥料切れ」や「日光不足」、葉っぱが黒ずんだり、丸まったりしているのは「根腐れ」や「病気」、の可能性があります。



水やりの基本と注意点

乾燥した環境が好きなハーブには、土の表面が乾いてから水を与えるのが基本です。

土が湿っているのに無理に水をあげたり、逆に、乾いているのにやり忘れるのはNGです。

注)表面が乾いていても土の中にはまだ水分をしっかりと含んでいる可能性もあります。土に指を差し込んで、土中の湿り気が感じられるほど水分を含んでいる場合は、もう少し乾燥するまで待ちましょう。

ものすごくシンプルなことなのですが、この基本を無視してしまうと、苗を買ったばかりなのに枯らしてしまうことになります。

ハーブに限って言えば「水分が足りなくて枯らしてしまう」よりも「水をあげすぎて枯らしてしまう」ケースのほうが圧倒的に多いです

 
従って、水を与えるべきか否かの判断に迷う場合は、「あげない」選択をするほうが総体的なリスクは低くなります。


たっぷりと

鉢内には根っこに吸収されなかった古い水や空気が溜まっており、それらが生長不良や病気を引き起こす原因になることもあります。

たっぷりと水をあげることで、それらを押し出し清潔な状態を保つ効果がありますので、水を必要としている時には躊躇せずに、鉢底から水が流れ出るくらいしっかりとあげてください。


整流で

散水ノズルを使っている方は「整流」で、ジョウロを使っている方はシャワーヘッドを外して、なるべく水やりをしてください。

シャワーで上から水をあげただけでは、土が十分に湿らないことがあります。土の表面が濡れていても土の内部まで浸み込んでいない場合も多いのです。

また、葉が比較的大きな植物は、水やりの際に葉が盾になってしまい、株元への水分補給が不十分になる場合もありますので注意しましょう。



しみ込み具合の確認

水がしみ込む様子で根詰まりしているかどうかを確認することができます。

表土にかけた水がすぐに浸透していくのは良い状態ですが、いつまでも染み込まずに土の表面に溜まっている場合は鉢内で根詰まりを起こしている可能性があります。

もし根詰まりしている場合は、更に大きいサイズの鉢に植え替えすることをおすすめします。



鉢受け皿に溜まる水

たっぷりを水をあげた時は、その水が鉢内を通り抜けて受け皿に溜まっていきます。

この時、受け皿に溜まった水をそのままにしておくと、常に湿気にさらされている状態を作り出すことになり根腐れの原因となりますので要注意です。

受け皿に溜まった水は必ず捨てましょう。


夏の水やりで注意すること

夏は、多くのハーブが生長しやすい温度まで気温が上昇しますが、高温多湿の状態に陥りやすい時期でもあります。

葉や茎が増えることで株元が密集し熱がこもりやすくなるため、茎をすいて株元に風が通る環境を確保してあげましょう。(他の茎や枝に干渉していある場合は、短く切ってあげると良いです。)

水やりは、必ず涼しい時間帯に行います。

暑い時間帯に水やりをしてしまうと、土や葉にかかった水の温度が一気に上昇して、お湯をかけた状態と同じようになりますのでダメージが大きいです。気をつけましょう!

野菜のレシピで「熱湯をかけるだけで簡単におひたしができる!」というのがありますが、暑い時間帯に水やりをするのは、まさにこのレシピに匹敵するようなことなのです…。


暑さが厳しい時期の日常管理については下記のページも参考になさってください。


冬の水やりで注意すること

冬は根っこから吸い上げる水分や養分が一気に少なくなり、生長もゆっくりになりますので、水やりの回数は極力少なくしましょう。

水分過多の状態で気温が氷点下になると水分が凍って霜柱となり、根の細胞が壊れて枯れることがありますので、特に寒冷地にお住まいの方は注意が必要です。

耐寒性のある植物だとしても、霜柱ができると大きなダメージを受けます。水分量は最小限にして乾燥気味で冬越しするのがベストです。



最後に

この記事を通して、これまで何となく行っていた水やりが少しでも効果的になることを願っています。

もし、頻繁に植物を枯らしてしまう方は、水のあげ方を少し変えるだけできっと良い変化が起こるはずです。

植物はその年の気候や温度の影響など様々な要素あって生長します。

科学が発達した現代でも、植物を育てることにおいては中々方程式通りにいきませんが、日々の観察をしっかり行いながら少しでも生育環境を整えてあげることはできるはずです。

是非、毎日植物たちの顔色を見てあげながら優しく見守ってください。


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ハーブについて栽培のコツ
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