身近にもある毒性植物とは? 子供やペットとのお出かけでも要注意

はじめに

庭や畑で育てた野菜を収穫したり、天気の良い日に山を散策しながら山菜やキノコを採取したりするのはとても充実した時間ですが、その際に普段から気をつけておきたいことがあります。

それは、「食用植物と有毒植物の誤認」による食中毒被害です。

悲しいことに、毎年必ずといって良いほど、「誤食」による食中毒で救急搬送されたというニュースを目にします。

最悪の場合には死に至らしめる毒は、畑や山で見かける植物だけではなく、実は公園などの身近な場所に生えている植物にも含まれています。

家族でのピクニックや犬の散歩で公園に出かける時にも、場所によっては注意が必要ですので、本記事を参考にお子様や散歩中のペットが間違えて手にしたり食べたりしないよう気をつけていただければと思います。



身近な毒性植物18選

これから紹介する植物の中には、触れただけで皮膚がかぶれてしまうような草花もありますので十分ご注意ください。


スイセン

有毒部位
全草
有毒成分
シュウ酸カルシウム、リコリン、タゼチン etc
中毒症状
吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、低体温 etc

有毒植物の事例で最も多いのが、このスイセンが原因で起こった食中毒です。

スイセンの葉はニラに似ており、花が咲いていない時期に誤って収穫し食べてしまう可能性があります。

他にもニンニクやノビル、タマネギなどと間違えられることもありますので注意しましょう。


ヒガンバナ

有毒部位
全草
有毒成分
リコリン、コルヒチン etc
中毒症状
嘔吐、下痢、呼吸困難、中枢神経麻痺 etc

昔は、その毒性を利用しお墓の近くに植えモグラやネズミから遺体を守っていました。

特に鱗茎に毒を多く含み、漢方では乾燥させて粉末にしたものが石蒜(せきさん)という生薬とし利用されています。

ただし薬用に用いるためには専門的な知識が必要となりますので、一般の方が利用するのは厳禁です。

スイセンと同じくニラやニンニク、ノビル、タマネギなどと間違えられることがありますので注意しましょう。



チョウセンアサガオ

有毒部位
全草
有毒成分
ヒヨスチアミン、スコポラミン、アトロピン etc
中毒症状
嘔吐、瞳孔拡大、意識混濁、口の渇き etc

夏から秋にかけてロート状の白く美しい花を咲かせますが、蕾や根、種子などが野菜に似ていることから、誤って食べてしまうという事例があります。

蕾はオクラ、根はゴボウ、種子はゴマのような見た目をしているので、野菜や花を同じ敷地内で育てている方は誤って収穫しないように気をつけましょう。


シキミ

有毒部位
全草(特に果実)
有毒成分
アニサチン、イリシン、ハナノミン etc
中毒症状
嘔吐、下痢、呼吸困難、痙攣、血圧上昇 etc

シキミに含まれる「シキミ酸」は、インフルエンザ治療薬の原料としても知られていますが、シキミ自体は全草に毒をもつ有毒植物です。

特に果実は中華料理に使用される八角(スターアニス)に似ていますが猛毒を含んでいる部位です。

食用の八角は「トウシキミ」という木の果実で、日本で自生することはほとんどありません。

もし国内で似たような実を見つけた場合は毒のあるほうだと認識して間違いありません。



キョウチクトウ

有毒部位
全草(根、葉、茎、花)
有毒成分
オレアンドリン、ストロファンチン etc
中毒症状
嘔吐、下痢、心不全、めまい、腹痛 etc

キョウチクトウに含まれる「オレアンドリン」という成分は、毒の代名詞とも言われる青酸カリよりもはるかに毒性が高く、少量の摂取だけで命を落とす危険があります。

街路樹や公園の植栽にも広く使われており、非常に綺麗な花を咲かせますが、実は猛毒をもつ植物です。

粘液が皮膚に触れただけでも炎症を起こしたり、燃やした時の煙を吸い込んで中毒症状を起こすこともありますので、剪定や廃棄の際には専門業者に依頼することをおすすめします。


クリスマスローズ

有毒部位
全草
有毒成分
ヘレブリン、サポニン etc
中毒症状
皮膚の炎症、嘔吐、腹痛、痙攣、呼吸困難 etc

様々な色合いと、花の少ない時期にも観賞を楽しめことから非常に人気の高いクリスマスローズ(ヘレボルス)ですが、実は有毒植物の一つです。

特に強い毒が含まれているのが根の部分ですが、全草に毒性がありますので、手入れをする時は必ず手袋をして防護しましょう。

栽培難易度もさほど高くなく、その美しさに惹かれて初心者の方も栽培にチャレンジされることが多いですが、毒性があることを知らない方が意外と多いので、身近に該当する方がいらっしゃる場合は、毒性について予め注意喚起をしてあげましょう。



フクジュソウ

有毒部位
全草
有毒成分
シマリン、アドニトキシン etc
中毒症状
嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺 etc

幸せと長寿を意味する名前をもっていますが、実は毒を含んでいる植物です。

春に顔を出す若芽がフキノトウに似ていることから、誤って収穫して食べてしまうという事例がありますので注意が必要です。

毒性を事前に把握していなかったとして、過去には、某テレビ局が放送した番組内でレポーターがフクジュソウの天ぷらを食べてしまうという事故も起こっています。


シャクナゲ

有毒部位
有毒成分
グラヤノトキシン
中毒症状
嘔吐、下痢、痙攣、血圧低下 etc

華やかな雰囲気で庭をゴージャスにしてくれるシャクナゲにも毒が含まれています。

ツツジ科の植物は毒をもつものが多く、園芸種のセイヨウシャクナゲなどにも注意が必要です。

一昔前は子供たちがツツジを見かけると花を摘んで蜜を吸っている光景を見かけましたが、これも品種を間違えて毒性のあるものを摂取してしまうと大変なことになります。

特に小さなお子さんのいるご家庭は気をつけてください。




トリカブト

有毒部位
全草
有毒成分
アコニチン、アコニン etc
中毒症状
嘔吐、下痢、血圧低下、呼吸困難、不整脈
手足の痺れ、口舌の痺れ etc

映画やドラマなどに限らず実際に起きた事件にも登場する、まさに猛毒植物の代表的な存在のトリカブトは日本三大毒草の一つです。

実は、「トリカブト」という名前自体は特定の植物の名称ではなくトリカブト属の総称のことです。

中でもエゾトリカブトは毒性が強く、その昔アイヌの人々が狩りに使用したとされています。

山菜採りのシーズンにモミジガサと間違えて採取して食べてしまったという例もありますので、よく山菜を採りに行かれる方は要注意です。


ドクウツギ

有毒部位
全草
有毒成分
コリアミルチン、ツチン etc
中毒症状
嘔吐、痙攣、呼吸麻痺 etc

トリカブトと並んで日本三大毒草にあげられている落葉低木で全草に毒が含まれています。

4〜5月に開花して、夏頃に綺麗な赤い実をつけますが、この実にも強い毒性があります。

秋になると紅葉して非常に綺麗な植物ですが、「イチロベエゴロシ(市郎兵衛殺し)」や「オニコロシ(鬼殺し)」という別名を持つくらいに恐ろしい有毒植物です。



ハシリドコロ

有毒部位
全草
有毒成分
ヒヨスチアミン、スコポラミン etc
中毒症状
嘔吐、痙攣、昏睡 etc

摂取した場合に幻覚や錯乱状態となり、狂ったように走り回る様からその名がつけられました。

山間部の湿地帯に自生する多年草で、普段の生活ではあまり目にすることがないかと思いますが、若い芽をフキノトウと間違えてしまう事例があります。

山菜採りに行ってたまたま見かけたので採取し中毒症状が出た例もありますのでご注意ください。


アセビ

有毒部位
葉、茎、花、樹皮
有毒成分
グラヤノトキシン、アセボプルプリン etc
中毒症状
嘔吐、腹痛、下痢、呼吸困難 etc

セビは漢字で「馬酔木」と書きます。これは、アセビの葉を食べた馬が酔ったような状態になり動けなくなったことから付けられた名前です。

その毒性から、鹿の被害に悩まされている場所においても、このアセビだけは食べずに残すほどで、奈良公園の鹿も敷地内のアセビには一切口をつけないそうです。

日本固有の植物で、公園の植栽として取り入れているところも多いので、ペットの散歩中に落ちた葉を咥えたりしないよう気をつけましょう。




イヌサフラン

有毒部位
全草
有毒成分
コルヒチン
中毒症状
下痢、嘔吐、呼吸困難、皮膚の知覚減退 etc

透明感のある淡く美しい姿をしていますが、全草に「コルヒチン」という猛毒を含んでいます。

葉をギョウジャニンニクやギボウシと間違えて、球根をタマネギやジャガイモと間違えて誤食する事例があります。

過去には、岐阜県の販売施設でギョウジャニンニクとして販売されていたものが、実はイヌサフランだったという恐ろしい例もあります。。


※一般的に料理に使用される「サフラン」との違いは下記のページで詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。


スズラン

有毒部位
全草(特に花と根)
有毒成分
コンバラキシン、コンバラマリン etc
中毒症状
嘔吐、頭痛、めまい、腹痛、血圧低下 etc

イヌサフラン同様に葉をギョウジャニンニクと間違えて誤食する事例があります。

特に多く毒を含むのは花と根の部分です。庭仕事でスズランに触れた手で食べ物を口にしても中毒症状を引き起こしますので要注意です。

このスズランの毒も青酸カリを遥かに上回る強さを持っています。



ジキタリス

有毒部位
全草
有毒成分
ジギトキシン、ギトキシン
中毒症状
下痢、嘔吐、消化器系の異常 etc

イングリッシュガーデンでもよく目にする、とても華麗で存在感のある花ですが、実はこのジキタリスも有毒植物です。

ジキタリスの若葉はコンフリーの葉と間違えられることがあり誤食をしてしまった事例があります。

とはいえ、一昔前までは天ぷらなどにして食べられていたコンフリー自体も現在は毒性のある植物として摂取を控えるよう注意喚起されていますので、あわせてご注意下さい。


ヨウシュヤマゴボウ

有毒部位
果実、根
有毒成分
硝酸カリウム、フィトラッカサポニン
中毒症状
嘔吐、下痢、腹痛、痙攣 etc

”ヤマゴボウの味噌漬け”と名付けられた商品がありますが、それらの原料はモリアザミの根を「ヤマゴボウ」と称しているため、毒性のあるヨウシュヤマゴボウとは別の植物ですので混同しないようにお気をつけください。

ヨウシュヤマゴボウの若い根は、ゴボウの根に似ていますが非繊維質ですので違いは分かりやすいものの、誤食してしまったケースもありますので注意が必要です。

一見ブルーベリーのような果実ですが、この果実も毒を含んでいるので絶対に食べないようにしてください。



ドクゼリ

有毒部位
全草
有毒成分
シクトキシン、シクチン
中毒症状
下痢、嘔吐、消化器系の異常 etc

トリカブト、ドクウツギと並ぶ日本三大毒草の一つです。

生育環境が似ていることからセリと間違って採取されることがあり、過去には集団食中毒を引き起こした例もあります。

葉の形状もセリに似ていますが、香りは食用のセリとは異なります。

毒成分のシクトキシンやシクチンは皮膚からも吸収される性質がありますので、素手で触らないように注意しましょう。


ドクニンジン

有毒部位
全草
有毒成分
コニイン
中毒症状
嘔吐、痙攣、下痢、腹痛、呼吸困難 etc

ヨーロッパ原産で現在は日本国内でも雑草化している植物で、古代ギリシャの哲学者ソクラテスが最期に飲んだ毒はこのドクニンジンから抽出したものと言われています。

葉はパセリやニンジンの葉と似ており、畑付近に雑草化したものを収穫して誤食する事例がありますが、ニンジンなどに比べて不快で強烈な匂いがします。

ある程度匂いで判断できる部分もありますが、少しでも判断が難しいと感じたら採取せずに廃棄しましょう。


有毒植物に関する書籍はこちらから

その他の有毒植物

前項でご紹介した植物以外にも、バイケイソウやクワズイモ、ヒルガオや紫陽花などのような身近な植物でも毒を含むものがたくさん存在します。

更に詳しい情報をお探しの方は、厚生労働省のホームページ内で毒性についての説明、誤食の注意喚起をご覧いただくことができますので、下記のリンクを参考になさってください。

<参考リンク1>
厚生労働省「有毒植物による食中毒に注意しましょう」

<参考リンク2>
厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル」


最後に

今回ご紹介した植物たちは、どれも美しい姿をしていますが同時に恐ろしい毒をもつものばかりです。

中には、園芸店で観賞用として販売されている草花も含まれていますので、これからご家庭で栽培されるという方はその性質をしっかりと把握し、十分注意を払った上でお取り扱いください。

被害にあわない、被害にあわせないためには、以下のことに気をつけましょう。

▶︎有毒植物と食用植物は必ず栽培区画を分けて育てる。
▶︎子供やペットが触れることのない場所で育てる。
▶︎手入れする場合は必ず手袋やマスクなどをすること。
▶︎野菜やハーブを収穫する際は、他の草花が混入しないように行うこと。
▶︎特定できない植物はそもそも採取をしないこと。

特に「花の咲いていない時期」は芽や葉の形状で判断しなければならず、非常に難しい場合があります。そんな時は絶対に過信しないようにしましょう。


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